第7話 石材を発見、ウィングタイガー出現 5日目

 5日目の朝、木材だけで熊達の居住区を作ろうかと思ったのだ。


 彼等の体の大きさ的に、木材を破壊する恐れがあるので、断念した。


 さすがに本拠地となるビルに住まわせるわけにはいかない。

 イメージにイメージを重ねていた結果。


 建設スキルを発動させて、どのような居住区なら熊達を満足させられるだろうか?

 と考え込む事態になった。

 

「やっぱりこれだよなぁ、でも石が必要だしなぁ」

「何を迷っているのだい?」


 目の前に半分が生きている女性で半分が幽霊のテスがやってきた。

 テスはこちらを下から見つめているわけで、もちろん谷間が見えるわけで。


 片方の胸ちらしか見る事は出来ず、もう片方は魂であった。


「何をそんなに鼻を伸ばしている。ほれ、熊たちの洞窟を造るのだろう? 熊と言えば洞窟に決まっているよ」


 すると野原で日向ぼっこをしていたタグマがやってくる。

 タグマは老齢の獣人熊と呼ばれるとても珍しい生き物だ。


「ふむ、古来より熊は洞窟で住まうと決まっている。別に迷路のような洞窟である必要はない、寝る所があればいいものじゃ」

「タグマさんは洞窟で寝たほうがいいんですか?」


 俺様の問いかけに、タグマはにやりとほくそ笑む。


「わしは出来れば普通の家がよいのう」

「そうですよね」

「じゃが、洞窟しかないのなら、洞窟で我慢しよう」

「それだと助かるのですが、石材がどこにあるのかという事で問題が」



 目の前の半人半霊のテスが腕を組み、

 獣人熊のタグマさんが腕を組み。


「あれがいいかもしれぬなぁ、川があるんじゃが、その周囲に沢山の石材があってな、ただし砕けるだけの力がないと素材としては持って来る事が出来ない程に大きいものじゃ」

「そうだね、あそこの川がいいよ、昔はよく魚釣りとかして遊んだなぁ」


「じゃあ、そこに行こうと思うよ」


「グリドリーとグマドリーの夫婦を連れていけ、わしはまだお主が伐採した木材を運ぶ手順で忙しいからのう」


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川地帯

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 俺様とグリドリーとグマドリーは川地帯と呼ばれる場所まで到着していた。

 テスさんは採集に忙しいので連れて来る事が出来なかった。

 採集班にもサポートメンバーが必要なのかもしれないな。


 木材メンバーは熊とタグマさんに任せていいだろう。

 伐採をするのは俺様の役目だ。


 石材を見つけたとしてもそれをどうやって粉砕するかを色々と考えた。

 しかし、何も思い浮かべる事が出来ない。

 マップに載っている川地帯について少し調べている。

 何か別なレベルを上げる方法が見つかるかもしれない。

 なので俺様は2体の化け物と言って良い程の巨大熊の夫婦を連れてきているわけだ。


「ぐうぐぐぐう」

「ががががが」


 後ろでは2体の熊達がまるでデートでもしているかのように歩いている。

 こちらとしては非常に気まずいのだが。


 俺様は毎回空に視線を配る。

 不思議なもので烏は至る所に存在していた。

 なので烏の目を利用して、川を観察する。


 微動だにしない俺様を見ておそらくだけど熊たちが心配したのだろう、背中をつんつんと叩いている。


 ちょっとだけ苛立ちを覚える俺様だ。

 サバイバルの基本中の基本は、川など湖には色々な動物がやってくるとされている。


 そこにはもちろん肉食動物が集まってくるだろう。


 まぁグリドリーもグマドリーも肉食動物なのだけど、


 敵の情報を知ったものは先手必勝する事が出来る。


 祖父の名言だ。


 その祖父も誰かの名言だと言っていた。


 まぁきっとどこかの誰かのすごい人なのだろうけど。


 そこは50体くらいの緑色のタイガーがいた。つまり虎みたいな動物がいたのだ。

 モンスターなのかもしれないけど、認識する事は出来ない。

 緑なのでウィングタイガーとでも名付けてみようかなとか思っていた。

 その中で一番大きいビッグな奴がいた。

 そいつの事をビッグウィングタイガーと名付ける事とした。


 名前ではなくて、あだ名みたいなものだ。

 それにテイムしていないので名付ける事は出来ない。


 それにしても俺様の心臓は激しく脈打っている。

 いくらビッグウィングタイガー程ではないとしても、あれだけの巨体だし小さいウィングタイガーでも3メートルはあるし、ビッグは8メートルくらい、ほぼ恐竜だ。


 川の大きな広さも半端じゃない。

 世界地図か何かで見たアマゾン川並に巨大だ。


 結構な荒々しい川の波だった。

 あそこに巨大ピラニアがいると言われても信じてしまうだろう。


 そこには無数の動物がいてもおかしくない川なのだ。

 勝手に名付けたビッグウィングタイガーの一派しかいなかった。


 おそらくだけど、ここを縄張りにしているのだろう。

 いたるところに縄張りだと知らずに近づいて食われてしまった動物またはモンスターたちの死骸が転がっている。


 骨になっている事から、遥か昔からずっとここを牛耳っているようだ。


 グリドリーとグマドリーは胸を一発叩いて、自分達に任せろとばかりだし、はぁ、お先真っ暗だよ。


 近くには石材として使えるような巨大な石が転がっている。


 川と繋がっている場所もある為、あまり取りすぎると、川の氾濫なんて考えられるだろう。


 氾濫させてしまえば、ウィングタイガー達もたちどころにびびって逃げていくだろう。


 その代わりこの川は使い物にならなくなる。

 使いものになるまでには結構な時間を要するはずだった。


 俺様は何か策はないかと考える。

 タイガーと言う事は猫の仲間で、猫はどのようなものが好きだっけとか。

 そう言えば、猫といえば魔法猫、あいつ今日どこに。


 後ろを振り返ったら。


「にゃーにゃーにゃー」


 なぜか草むらで暴れている訳だ。

 その暴れている理由を見て思った。


 俺様はにやりとほくそ笑んだ。


 それはあまりにも現実日本に居た時、猫たちが夢中になって憑りついたとされる。

 猫じゃらしそのものであり、しかも猫じゃらしとマタタビが合体しているようなものだ。


 さすがの魔法猫ティータさんも興奮して説明を忘れているようだ。

 こいつ一言もしゃべらずついてきやがって。


「お前どけろ」


「にゃああああ」


 魔法猫のカギヅメを食らったのであった。



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