八日目

 彼女たち「少女のつがい」を渡してきた友人からようやく返事が来た。

 友人は、あの二体のことは何も知らないのだそうだ。通販サイトで別のものを購入した際に、注文したものと一緒に彼女たちが入った箱が届けられたらしい。誤配送かと思い使用した通販サイトに問い合わせたが、心当たりがないとのことだった。不自然に軽い箱を開けてみると、あの二体がぽつんと箱の中に入っていて、彼は不気味さを感じ恐怖を覚えたという。数日様子を見ていたが、自分ひとりで処理しきれないと考え、私に託すことにした。彼から来たメールの文面にはそう記されていた。元の所有者である彼なら、彼女たちのルーツを知っていると思っていたが、予想外の返事に私は少し困惑している。彼女たちは一体何なのだろうか。今とは違う記号的でない名をつけて可愛がったり、彼女たちが私にすりよるほど懐いたりすれば、あの奇妙な生物たちへ愛着がわくのだろうか。今のところ、私に害をなすような行動をみせないため、もうしばらく観察を続けていこうと思う。

 

 B-01とB-02の二体は、現在水槽内で過ごしている。使用している水槽は三十センチ規格水槽。大きさは、幅三十センチ、奥行十八センチ、高さ二十四センチである。水槽の底面には小動物用の柔らかい床材を敷き詰めている。餌や水を入れる容器は個体数分ではなく、一つずつ入れている。他には、寒さ対策として十五センチ四方程度の大きさのタオルを入れている。

 二体は、昨日深夜辺りから、床材を隅に集めだした。巣をつくっているつもりなのだろうか。B-02が集めてきた床材を、B-01が隅で押し固めている。二体は作業を分担しているようだ。B-01は体重をかけて腕で潰しているが、床材のかさに変化はない。B-02は両腕で床材を寄せ集めているが、集めるペースの方が早いので、B-01の姿が段々埋まってきた。すでに半分ほど姿が見えなくなっている。二体はそれぞれ自分の作業に夢中で、互いの様子を気にしていないようだ。

 B-01が床材を押し固める行動をやめた。床材を集めていたB-02は、B-01がやめてから二往復ほど運んだあと、自分で積み上げた床材の隣に座った。その中でB-01が埋まっていることに気が付くと、B-02はもぞもぞと中にもぐっていった。水槽を別の角度から見てみると、寄せ集めた床材の中でいつものように二体は寄り添っていた。

 二体が床材を集めていた意図は分からなかったが、あとで床材は均しておこうと思う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

少女のつがい 鈴居 凛大 @5_lz

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ