六日目

 彼女たちは、常にぴったり寄り添っている。

 昨日は服を着せてみたが、脱ぎ捨てたり居心地が悪そうにしたりしているように見え、あまり気に入っていなかった様子から、服を着せることは昨日限りで止めた。ずっと寄り添っているのには何か理由があるのだろう。寒いのだろうか? もしかすると、育成環境が適していない可能性がある。試しに体温を測定してみることにする。

 直腸温を測定できた方がより正確だが、自室にある一般的な体温計を彼女たちに挿入するのは、双方の大きさを考慮し困難であると判断した。他に使えそうなものはないかと探したところ、耳式のものが見つかった。耳式の体温計を用いて測定してみたところ、B-01は三十七度二分、B-02は三十六度八分であった。人間と比べると体温が高い。時間帯でも変動があるかもしれないため、本日は二時間おきに測定していこう。

 測定を開始したのが午前八時。二時間おきに測定を続けた。以下は午後十時までの結果を記す。二体ともほぼ同じような温度変化をしていた。変動としては、朝方は低かったが、日中には上昇し、夕方まで日中とほぼ一定のラインをたどった後、夜には朝と同程度まで下降がみられる。差は一度以内で変動しており、グラフの形は人間の深部体温の変動と似た結果となった。この結果は睡眠とも関係がありそうだ。

 彼女たちが睡眠をとるのは、私が眠るのと同じような時間である。私より遅く就寝し、私より早く起床している。眠っているところを見せないようにしているのだろうか。私のことを警戒している様子は変わらずあるので、これも警戒行動のひとつなのかもしれない。このように述べたが、彼女たちの眠っている姿をまだ肉眼では観察できていない。眠っている間の観察を自分で行うのは難しいので、定点カメラを設置し、記録された映像を確認した。二体は眠っている間もぴったりと寄り添っていた。


 現在は柔らかい床材を敷き詰めた水槽で育成している。環境は室温二十三度、湿度四十パーセント程度で保っている。彼女たちを恒温動物であると仮定しての設定である。おおよその恒温生物は、この程度の温湿度で問題はないはずだ。適温であるはずだが、昼夜問わず二体はくっついて過ごしている。餌を食べるときはもちろん、排せつの際までくっついている。まるで一つの生き物のようだ。詳細な観察を行う際、一体ずつ取り出していくが、二体を引き離すと、それぞれひどく暴れる。彼女たちが常に寄り添っているのには、何か理由がありそうだ。明日は仕切り版を使用して、二体を離して過ごさせてみよう。

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