四日目

 少女たちは、我々人間と似たような姿をしているのに、未だ裸のままであるのはいかがなものかと思い始めた。

 他の小動物には被毛などがあり、服を着ていなくても気にならない。動物に服を着せている方が珍しい、というのが世間の認識なのではないだろうか。しかし、よく似た姿の生物が裸のまま目の前にいるというのは、倫理的配慮が欠けているというか、何か間違えているような気になる。彼女たちは一応「少女」であるようなので、もしかしたら、裸のままでいることに恥じらいを覚えているかもしれない。記録の手を止めて、ふと水槽へ目線をずらしてみると、少女たちは二体ぴったりくっついて、こちらをじっと見つめていた。じっと見つめ返しても、向こうは目線をずらさない。恥じらいがどうとか先に記述したが、彼女たちにそういった価値観はないのかもしれない。

 だが、見ていて寒そうなので、服を用意してやることにした。彼女たちの大きさなら、着せ替え人形の洋服が丁度良いだろう。試しにインターネットで二着注文してみた。明日届くらしい。


 水槽に住居を移してから、彼女たちの様子をより観察しやすくなった。柔らかい床材の上を移動する様を遠くから見ていると、ハムスターでも飼っている気持ちになる。

 B-02は時折飲み水として置いている水を両手ですくい、それを顔につけて洗うようなそぶりを見せる。B-01にはみられない行動だ。二体は寄り添っているほかに、互いを舐めあうこともある。小動物に置き換えれば、毛繕いのような行動だろう。全身をくまなく繕う様子は、とても仲睦まじく見える。案外綺麗好きな生物なのかもしれない。このグルーミングで、実際に体が綺麗になっているのか興味が湧いた。清潔にしておくことに越したことはないと、ぬるま湯を絞ったタオルで拭いてみる。まずB-02から体を拭いた。水槽に残っているB-01は、水槽の壁を叩きながら、ぱくぱくと口を動かした。叩く音以外、私には何も聞こえなかったが、彼女たちは自分たちにだけ聞こえる音声でコミュニケーションをとっているのかもしれない。どちらもやや暴れて嫌がっているように見えたが、拭いた後に乾いたタオルで包んでみるとおとなしくなった。使用したタオルはほとんど汚れておらず、彼女たちが自分たちだけで清潔を保てているとわかった。今後は、ぬるま湯で拭くのは週に一度程度にして様子をみていくことにしよう。

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