第9話 終わりの始まりに
真夜中にけたたましく基地の非常ベルが鳴り響く。
コンは急いで上着と帽子を着て部屋を飛び出した。
廊下に出ると前から面識のある隊員が、走ってきた。
「おい!何があった!?」
「コン隊長!対セルリアン用物質研究室から煙が出ていて…」
「クソッ!サンドスターロウのサンプルが流出したら洒落にならないぞ!」
研究室前の廊下には既にサンドスターロウによる汚染とセルリアン化を防ぐ為に研究棟の研究員達がサンドスター除染を行っていた。
「コン!」
「ん?」
振り向くと白い防護服を着ているがそこにはメガネがいた。
「どうした?メガネ」
「大変だよ!この中からさっきまでフレンズの反応があったのに消えたんだ!もしかしたら、フレンズが迷い込んでたのかも…」
「なにっ!!マズイ!早く助けにっ!」
コンは研究室のハッチを開け、中に入ろうとするが止められる。
「コン隊長!落ち着いて下さい!防護服が無いと危険です!」
「…チッ防護服は何所だ!」
メガネが防護服を差し出すとすぐさま着用して、研究室内に数人の研究員達と突入する。
~研究室内~
研究室の中はスモークを焚かれた用に煙が充満していた。
倒れた机や椅子を除け、ある程度進むとそこには一人のフレンズが、
「ナナシ!大丈夫か!?」
コンが駆け寄ると爪のような物で腹部を引っ掻かれる!
「ぐっ…!ナナシ!…お前…一体何故…」
コンは傷口を抑えながら銃を構える。
「私…いや、俺は平和を目指している、誰もが争うこと無い世界…俺はその世界を作るためにこの世界を完璧に“再現“する事にした」
ナナシは淡々と自分の考えを述べる
「ナナシ…誰にそそのかされたのか知らんが、辞めるんだ、戻ってこい
コンはナナシに銃を向けるのを辞め、そう説得しようとするが無駄に終わった、
ナナシはコンのリボルバーを“再現“して、コンに向けて引き金を引く。
バァァン!
「ナ…ナシ…そんな…お前の力は…そんなとこまでは…」
セルリアン弾はコンの右胸に命中、コンはナナシにてを伸ばし、地面に崩れ落ちた。
「た、隊長!…クソッ!撃て!撃てぇ!」
後ろに控えていた研究員や隊員達が一斉にナナシに向けて発砲。
(ここは一旦引いて俺の住処へ帰ろう…)
ナナシはそう考えると弾丸が飛ぶ中落ち着いて壁を破壊し、そこにあった軽装甲車を再現して、その場から走り去った。
その後…
「こ、コン!」
メガネは胸から血を流して倒れているコンを担架に乗せ、医療棟へ運んだ。
しばらくすると胡蝶も起き、事件の一割を知った。
メガネは胡蝶に全てを教えなかった。
何故なら、彼の親友であるナナシが今目の前で死にかけているコンに弾丸を撃ち込んだのだから。
手術室
「出血多量…これはもう…」
「諦めるな!コンは今戦ってるんだ…体内のセルリアンと、そして出血による寒さと…」
しかし、みるみるコンの血液は減っていく
「クソッ…出血が酷すぎて止血剤が効きません…」
メガネは少し考えると衝撃の言葉を放つ
「試験段階のサンドスターハイを撃ち込もう」
「何ですって!あれはまだ確立してない技術ですよ!?」
「それしか助ける物は無いんだ…やるしか…無いんだ…」
メガネは手術室の棚の奥から金属製の箱を取り出し、箱を開ける。
箱の中には1本の注射器が入っていた。
中の液体はサンドスターの用な輝きを放っている。
「め、メガネさん…本当に…」
「やるしかない…」
メガネは注射器をコンの首筋に刺し、中の液体を全てコンに打ち込んだ。
すると、コンの胸の傷や体中の傷がみるみるうちに塞がっていく。
「す、凄い!これがサンドスターハイ!」
数秒後には胸の傷は全て塞がりコンは意識を取り戻した。
「うっ…確か俺はアイツに胸を撃たれたはず…で、ここは…?」
コンは手術台の上で言う。
「コ…コン!よかったー!!」
メガネはコンに泣きつく。
「君が居なくなったら、僕は…どうしたら良いか…」
「おいおい…大袈裟だな…それよりもナナシは?」
「逃げたよ…装甲車を再現してね」
「胡蝶には何て伝えた?」
「ナナシが緊急任務に出たって…」
「成る程…」
そう言うとコンは手術台から立ち上がった。
「こ、コン!ダメだよ!まだ君は!」
「コン隊長!今そんなことしたら!」
心配するメガネと医師を尻目にコンは手術室の出口に向かう。
「大丈夫だ、気分は清々しい、こんな感覚は久しぶりだ、それに…」
コンの脳裏にナナシの顔が浮かぶ。
「アイツは今、最も脅威的な存在だ、連れ戻す、もしくは消すしか無い、このパークの為に」
コンはそう言い残すと手術室を出て、ブーニーハットと右胸に穴が空き、まだ少し穴の回りに血のシミが残っているオリーブのジャケットを着て、医療棟を出た。
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~ナナシの縄張り~
俺は住処の近くに到着したが、何か様子がおかしい…イヤな予感がする。
ナナシは急いで自分の住処へ戻る。
「イエネコ!居る……」
ナナシが住処のドアを開けるとそこには地面に倒れたイエネコと謎の男が立っていた。
男はイエネコに光る棒を向けている。
「お前、ここの家主か?悪いがコイツ、お前の知っているフレンズじゃないみたいだが、」
「なっ!急に一体何を…!?」
と、次の瞬間イエネコは男に爪で裂きかかる。
男はイエネコを念力のような物で吹っ飛ばした。
「コ…殺す…お前は…あたしの邪魔っ!」
「ほら、この通り完全に別物になっている」
そう言うとイエネコは野生解放して、男に飛び掛かり男を吹っ飛ばし、机にぶち当てる。
「ゲホッゲホッ…クソォ…痛え…」
「あたしは…探す…自分の記憶を…例え…どんな犠牲を払っても…」
「イエネコッ!一体…?」
ナナシがイエネコに近づくと、イエネコは爪で斬りかかる。
「殺すっ!」
イエネコの爪がナナシに触れる前にイエネコに幾つかの触手が突き刺さる。
イエネコは宙に吊され、手足はダランとして、動かなくなっていた。
「ぼ…僕はそんなはずじゃ…」
ナナシは後ずさりする。
イエネコの亡骸は触手が抜け、床にドスッという鈍い音共に落ちる。
「お、お前…お前が…」
「違う!僕じゃない!僕がやったんじゃ!これはっ!」
ナナシはかなり動揺している用だ、男は静かにナナシを見つめて、言う。
「どんな事があろうとお前は自分の手でフレンズを殺した」
「っ!!!」
男は光の刃を伸ばしてナナシに斬りかかる。
「お前は“この世界“でも危険な人物になってしまったな…“削除“するしか無い」
セルリアンの触手が自動で光の刃をブロックするが一瞬で斬られる。
「この世界?削除?一体何の事だ?」
「それはお前は知らなくて良い世界の話だっ!」
光の刃がナナシ本体に振り下ろされる。
「さらば、」
バチィ!
「なっ…!それは…」
「…お前がどんな奴か知らないけど、俺の邪魔をするなら、殺すただ、それだけだ!」
ナナシの手にはセルリアン色の光の刃を放つセーバーが握られていた。
「お前!そんな所まで再現出来るのか!?」
「…俺の力はこんな所まで来てる、この力を平和のために…」
男とナナシはつばぜり合い状態になり、ナナシは男を圧倒している。
(こいつ…何て力だ!このままだと…)
(死ぬ!)
男の脳裏に死の恐怖が浮かぶ、ナナシはそれを感じ取った。
(心の弱み…死に対する恐怖…)
「それが仇となるっ!」
「なっ…!」
男が一瞬力を抜いた所の隙を突き、セーバを押し切る。
瞬間、男のセーバは自分自身の顔に触れる。
「ぐぁっ!熱いっ!熱いっっ!」
ナナシは更にセーバに力を込める。
「ぐぁっぁっ!」
「…」
ナナシの目は冷酷な物へなっていた、
セーバをもう一押し…
次の瞬間…
「なっ!俺のセーバが消えたっ!?」
ナナシと男の手からセーバが消えていた。
「この世界にセーバというオブジェクトは今、消滅した、よってお前の再現も効かない」
「そうか…じゃあお前も武器を失っててことだな」
「…まさか、お前っ!」
男に向けて触手を伸ばす、男はそれを距離的に避けることは出来ない。
「さよなら」
男の腹を触手が突き刺す。
「もう逃げられない」
「それはどうかな」
男は次の瞬間光の粒子となり消える。
「…一体何が起こってるんだ、この世界は」
ナナシが自分の家から立ち去ろうとするとイエネコの亡骸が目に入る。
「ぐっ…!」
それと同時に凄まじい頭痛に襲われ、脳内で声が鳴り響く。
(食え…そいつを食え!)
(イヤだっ!そんなこと…)
(食えと行っているんだっ!)
(ぐぁぁっ!)
ナナシは気絶した。
目を覚ますと口の周りと手にに血がついていた。
視線を上げると、そこには…
人の形をとどめていない肉塊があった。
「ハ…ハハ…僕じゃない…僕がたべたんじゃ無い…ハハ…ハハハ…」
ナナシは吐いた、自身が同種の肉を食ったことに耐えきれなかった。
その時だった。
窓から何か投げ込まれた。
「スタングレネー…」
言い終わらないうちに爆発した。
辺りは凄まじい音と光に包まれる
そして…
「突撃!」
ドアを蹴破り実銃を構えた集団が入ってくる。
「セルリアン…ハンターズか…」
「そうだ、さっきは良くも俺の胸に鉛球…いやセルリアン球ぶち込んでくれたなぁ?」
ナナシはとっさに顔を上げる。
「コン!?アレを喰らって!」
顔を上げると同時に部隊員の顔の色が変わる
「お前…まさか、…喰ったのか!?」
「違うっ!僕じゃない!」
コンの顔は怒りを通り越して恐怖を感じていた。
「ナナシ…お前は…」
「僕のせいじゃ無い…僕のせいじゃ…」
コンは少し黙ってナナシの顔を見ながら言う
「…対象を確保」
次の瞬間ナナシの首筋に注射器が刺され、視界が暗転した。
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「力を着けたな…これで…遂に全てを再現出来る、そして、平和な世界が訪れる…」
「…女王、これで良かったのか?」
「まだあのフレンズの事を気にしているのか?」
「…」
「平和には犠牲がつきものだ、100人が死ぬより、一人が犠牲になった方がましだ」
「…でも」
「口答えするな、お前は早くここから出る術を考えろ」
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~ハンターズ本部特殊収容コンテナ~
目を覚ますとイヤになるほど白い部屋にいた
出口は見当たらない。
しばらくすると天井のスピーカーから音が聞こえてきた。
「おはよう、ナナシ、断っておくがその部屋の壁は全て対サンドスター反応装甲だ、無駄な攻撃はしないことだな………まさかこんな形で戻ってくるとは思ってなかった…ナナシ」
「…僕はどれぐらい寝てたんです?」
「3日だ、あの薬を喰らって3日は大したもんだ、本来なら10日は寝てる」
そう言うと同時に一部の壁が透過して監視室らしき所を見つけた。
コンテナから4.5mは離れて更にガラス張りの監視室にはコンとメガネ、コヨーテ、そして胡蝶がうつむいて座っていた。
「胡蝶っ!」
「…」
胡蝶はうつむいたまま、何も話さない。
「ナナシ、残念だが、上層部の決定によりお前は終了処分する事になった…対セルリアン溶液付けにされる、そのコンテナごとな…本当はお前を助けてやりたいが、お前が奴を喰った事で、終了処分が確定になってしまった…俺の交渉も…無駄だった…申し訳ない、ナナシ」
「それは何日後ですか?」
「後3日だ、何か欲しいものがあったら言ってくれ善処する」
そう言うと皆ゾロゾロと監視室を出てく。
皆が出て行くと壁の透過は無くなり、変わりに飯が出て来た。
「チャーハン…」
机に座り、チャーハンを食べ、考える。
(さて、どうこっから出ようか…)
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~ハンターズ宿舎~
監視室から帰ると胡蝶は真っ直ぐ自分の部屋に入って鍵をかけてしまった。
「…胡蝶」
コヨーテが心配そうにドアを見つめる。
「アイツに、この業界はキツすぎたかもな」
コンはリビングテーブルに座りコヨーテと同じ方を向く。
「胡蝶君、ナナシ君の事であんなに辛そうに考え込んで、本当に、今後が心配だよ…」
「メガネ、この業界に入って俺達はどうかしちまってんだ、人やフレンズがカガヤキを失うのが当たり前、それが日常、その感覚が既におかしいんだ」
コンは立ち上がり、冷蔵庫から酒を2本、ジュースを一本取り出して、メガネとコヨーテに渡した。
コンは再びリビングテーブルに付き、酒の蓋を開け、飲む。
「…胡蝶、あんな若者はこんな世界に来るべきじゃ無かったな…」
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あとがき
遅れてすいませんでした。
理由はハイパースケープとAPEX全て奴らが悪いっ!(+アイデア不足)
次からはもっと早く仕上げるんで、許して下さい(_ _ )/ハンセイ…
さて、次回はニホニウム担当ですっ!
物語はクライマックスに近づいて参りましたっ!
また、11話でお会いしましょう!!
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