宇宙戦艦の憂鬱
一応驚いたリアクションをとったものの、俺は頭の中でどこか一歩引いた感じで自分を見ていた。
この覚めない夢においてことごとく自分の知識に無い事態が起こる事を以てして、これが現実であることを否応なしに認めつつあった俺はその流れでそういう結末になるであろう事は大体予想はしていたのだ。
そうであれば今更、何を驚くことがあろうか。
その上、仮に元の地球に何らかの方法で戻れたとしても親戚知人も墓の中どころか名も無き一般市民として歴史の彼方に埋もれているであろう現状ではそこに俺が依るべきすべは存在しないであろう。
俺はそんな思索に耽るとこれまで以上の疲労感を覚えてカプセルの横にあるつるりとした金属の光沢を放つ、窪みの付いた卵のような椅子に腰を掛けた。見た目とは異なり適度な反発で身体に合わせてフィットする椅子に少し戸惑いつつ、ぼんやりと天井に近い壁を見つめる。
<マスター、少しお休みになられますか?>
心なしか少し気遣わしげなカスミの声が聞こえてきた。
何か足りないAIだと思っていたが、今の虚ろ気な心には少なからず響くものがある。
「この身体でも睡眠……と言っても良いのか分からないが休息が可能なのか?」
<はい、厳密には人間の睡眠とは異なりますが定期的に低活動状態にし、記憶領域の最適化や活動維持関連機構のヘルスチェックを行うことが必要です>
「ああ、分かった。少しこのまま休むことにしよう」
そう答えた途端、自分の視界が不明瞭になり、泥沼に落ちるように意識を手放した。
……
…………
……………………
* * * * * * * * * *
(海底から水面を見上げるようにぼんやりと何かが遠くで蠢くのがみえる)
(目を細めてはっきりと見ようとする程、その輪郭がぼやけて曖昧になってしまう)
(蠢く何かはせわしなく輪郭を変えつつも、常にひとつだけで観客のいない客席に向かってパントマイムをしている様に見えた)
(ふと、それは動きを止めるとその次の瞬間、ノイズが走り、視界が瞬断して明滅した)
(俺は届かないと理解しつつも水面に向けて手を伸ばそうとした途端、
さらに深い海溝に身体を引きずり込むような 真っ黒な 引力に
抗う事も できずに
世界→ (ワタシ ハ)
(繰り返ス) ←が
(ダレ……カ…) 暗↑ 転↓
す る)
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……
……
……
……
……
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