とある男の日常
時雨/ときう
第1話 日常⑴~通学編~
僕は、電車に乗っている。朝のこのタイミングの電車は嫌いだ。人が多い。きつい。椅子に座れない。おまけに人口密度のおかげで通信状態も悪くなる。こんな電車、いわゆる“満員電車“に僕は毎日乗っている。
向かう先は学校だ。まだかまだかと駅名が表示されるモニターとにらめっこをする。次はまだ違う駅だ。目線をモニターから目の前にいるサラリーマンの背中に向ける。その背中はもうあと5センチもすれば僕の顔が付いてしまうのではないか、と言うほどに近い。唐突に、電車が大きく揺れを起こす。一刹那、視界が遮られる。どうやら目の前のサラリーマンの背中が僕にぶつかったらしい。僕は倒れかけた、が、すんでのところで僕は体勢を取り持つ。平静を装い、何食わぬ顔で吊革に手を掛ける。
そうこうしているうちに次の駅に着いた。人がぞろぞろ降りる。つかの間の休息。だがまたその駅で容赦なく乗ってくる、学生や、サラリーマン。僕らを潰さんばかりの勢いでぐいぐい押してくるもんだから、思わず吊革から手が離れる。同じタイミングで扉が頓狂な音を上げて、閉まる。目線をモニターに向けてみる。すると、次の駅が僕の停車駅だった。思わずホッとして安堵の息を漏らす。
電車が激しく揺れる。僕のバッグが1人の乗客に当たってしまう。その人と目が合う。睨まれる。少し怖さを感じ、慌てて目を逸らす。
そんなこんなでいると電車は、だんだんスピードを落とし始めた。僕の降りる駅が近い。スマホに映る時計を見ると、非常にギリギリの時間であった。また遅刻してしまう。僕は駅に着くとすぐさま人混みを掻き分け、駅のホームに出た。
僕は改札を抜けながら思う。あぁ。こうしてまた憂鬱な毎日が繰り返されていく。全く、面白くないこの世界は非常に不条理だ。僕はその感情を押し殺すことしか出来ない自分に歯痒い気持ちを覚えた。
とある男の日常 時雨/ときう @Boku-No-Yozora
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。とある男の日常の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます