第5話 a=3

この繰り返しのような日々はいつまで続くのだろう。ただ夢を描いては消すだけの日々に、居心地の良さをも覚える今日この頃。ここはいつまでも雨が降らないし、何も食べなくても生きていける。必要なのはこのノートだけ。毎日黒く染まっていく、このスケッチブックだけ。


どんなに良い生き方をしている人にも、人生の終わりというものはあるらしい。それなら何故、世の中はこうも生きる事に前向きなのだろう。毎日食べて寝るという当たり前の生命維持さえも鬱陶しく感じる。ここまで人生に欲が無くなると、多少の他人の言葉は気にならなくなるのだという事を知った。だから私はここにいる。私が私であるために。


きっとこの非現実世界にも終わりがあるのだろう。現に今持っているスケッチブックも1ページ1ページ、着実に黒く染まっている。残りのページが全て黒くなったら?この世界は無くなってしまうのだろうか。私は何処へ行ってしまうのだろうか…?


ふいに、この世界にいるのが怖くなった。


手元に開かれた書きかけのページは、下半分だけ白く残っている。私は、上半分だけを黒く塗りつぶした。残った下半分も、どうせ黒く塗りつぶすと分かっていたのに。

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