第3話 a=2
昨日のスケッチはしっくりこなかった。一昨日も、その前も。おもむろに真っ黒なページを開く。最初はどのページも真っ白だった、はずなのに。いつしか黒く塗られたページの方が多くなっていた。
昨日のは書き出しが良くなかったな。少しありきたりすぎる。今日こそは。そう思って砂浜を歩く。ここは砂浜というには岩が多い。まあ、そのおかげで座ってスケッチが出来るのだけれど。
創作はナイフで自分の身を刻んでいくようなものだ、と誰かが言っていた。少し大袈裟だとは思うけれど、間違ってはいないと思う。創作は、自分の身を蝕んでいく。何度も何度も体に傷をつけ、種に血を与え、自分がふらふらになった頃に芽が出る。そんな感覚。
それなのに、私のような人種は、創作をやめられない。何度も壁にぶち当たっているのに。何度他人に笑われたか。それでもやめられない。有名になりたいとか、何かを伝えたいとか、そんな目標がある訳でもない。それでも。
それでも。漂っている言葉が見えてしまって。捕まえて書きとめる他なくて。たとえそれらが、今私がしているように、黒く塗りつぶされてしまうとしても。
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