第3話 友達?

 異能力の授業について話しておこう。

 普通、緊急時以外、外での異能力の使用は危険なので原則禁止だ。しかし、異能力の強さ、理解度はその人の今後に左右される。よって、安全な環境下での使用が必要になってくるのだ。前にもチラッと言ったが、異能力の授業はダメージを減らす結界の貼られたドームで行われる。動きやすいようにともっとダメージを軽減するために、異能力の授業用の服もあるのだ。ダメージはある程度この服が肩代わりしてくれる。この授業では、自分の異能力の練度を高めることはもちろんだが、どんなことに役立てるのか、また、その異能力の可能性を伸ばすことを各々が考え実行する時間だ。例えば、異能力が簡単な攻撃系で、単に威力を上げたいのなら、ひたすら練度を極めたり、タメを作ったりしてみたり感覚を鋭くしてみたりして異能力を磨けばいい。この前の親玉の炎の威力が3人組と比較にならないほど強かったのは元々の異能力が違うというのも大きな要因であるが、一年間の異能力を磨いた時間の差というのも大きいだろう。これはできるかできないか、人それぞれだが、異能力の使い方、解釈次第で努力すれば、技のようなものつくれたりできるようにだってなる。



「「なぁ、無能が異能力で2年を返り討ちにしたの聞いたか?あれほんとうだったんだな。」」

またか、と俺は深いため息をついた。

今日はこの話題でもちきりのようだった。更には、異能力の授業に俺が参加したことによってピークに達したようだ。俺は注目の的になっていた。が、すぐ3人組をおこり終えた篠宮先生にしずめられた。

 「清十郎くん、異能力発動できましたか?」

久本が話しかけてきた。

「いや、これからだよ。」

そう、これからが本番だ。あのときは発動できたが、とっさだったためか条件もまともにわかっちゃいない。だが、方向性は見えている。俺の能力は炎系だということはわかっているのだ。あとは、これまで見てきた炎系の能力の発動条件を試していけば、いつかは発動条件を満たして発動するはずだ。さらには、不良グループの親玉の能力に面白いほど似ていたから、おおよその発動条件の検討はついていた。

「久本っ、少し離れて見てろよ、いくぞ!」

俺はあの日見た親玉がやった通りに手に力を入れてみた。

、、、、、、。

だが何も起こらなかった。

「、、、、え、?」

手が光ったり、炎を纏ったりもしない。

そこには1人手を前に突き出して、ポーズを決めてる俺の姿があった。

「プププッ、清十郎くん、面白いのですよ!」

久本が堪えきれなくなったのか笑い始めた。

「わ、笑うなよ!こんなはずじゃないんだよ!クソ、出ろ炎!違う!なら来れ!これも違う!」

久本が笑い転げていた。

「おいっ、笑いすぎだ!」

少しウザかったので、俺は久本の頭にチョップを入れた。

「いたいっ!何するですか!清十郎くんは変な上にいじわるなのですよ!?」

久本は、プンスカ頬を膨らませている。それは、ちょっと可愛かった。



「しかし、なんで何も起こらないんだ?」

俺はこれまでで発動条件となり得る行動を全て試したが結果は何も変わらず。噂を聞いて注目していたら、変な動きを連発する俺に興味津々だったクラスの奴らも途中からは飽きたのか自分の異能力向上に努めていた。

「やっぱり俺には異能力はなかったのか、、、。」

「おいおい、佐藤、あきらめんのがはやいんじゃねーのか?その時、どんな状況下で発動したんだよ?」

篠宮先生が心配したのか、話しかけてきた。

本当にいい先生だ。中学の先生はすぐ見捨てたのに。

「その時は、助けなきゃってことに夢中で異能力発動したことなんか二の次で、、、。

何か発動条件の手掛かりがあればいいんですけど、、、。」

手詰まりだった。そもそも、大前提で手掛かりが足りないのだ。俺が試したのは、これまで見てきた他人の発動条件だ。しかし、それは似ていることはあっても全く同じということはない。更には、2つや3つの条件が重なって初めて発動する異能力の場合、この方法では拉致が開かないだろう。

「なんだ、簡単なことじゃないかよ。」

やはり。頼りになる先生だ。俺は何も思いつかなかったのに。

「わかるんですか!俺、何も思いつきませんでしたよ!どうしたらいいんでしょうか?」

篠宮先生は悪戯に笑いだした。

何か嫌な予感がする。

「ほら、一ヶ月後ぐらいに異能力の技能を争うスリーマンセルの大会が開かれるだろ?それにでりゃいいじゃねぇか。うまくいきゃeクラスからの昇格もあるかもしれねぇしな。」

ぶっ飛んでいた。

「なに考えてるんですか!?俺まだ異能力の使い方すらわからないんですよ!それなのに異能力の大会だなんて、、、!?しかも、出るにしたってどうせ、俺と組んで出たい人なんていないじゃないですか!」

まあまあ、と篠宮先生は俺をなだめた。

「佐藤、お前は手掛かりが欲しいんだろ?なら、その時と似た状況を作り出せばいい話じゃないか。これにでりゃあ、手掛かりの一つや二つ、すぐに出てくるさ。それに、異能力がなくても戦えるように私が剣をおしえてやるよ。幾分かはまともに戦えるようにはなるだろう。安心しろ、昔、私がこの学校にいた頃の大会では能力の都合上、剣術のみでいいとこまでいったんだぞ?それと、誰も組みたがらないなんて悲しいこと言うな。お前にはもう友達がいるだろ?」

なるほど。一理あると思った。しかし疑問なこともあった。

「しかし、”友達”ですか?」

俺にそんなものいたためしはない。

と思ったのも束の間、俺は後頭部をチョップされた。

後ろを振り向くと先ほどよりもプンスカと頬を膨らませた久本の姿があった。

「清十郎くん!私がいるじゃないですか!私は友達だとおもっていたのに!清十郎くんが私のこと友達とおもってなかったなんて!!」

本当に驚いた。今まで、俺が無能力者だからと、関わろうとしてくる奴なんていなかった。そんな俺を友達と言ってくれる奴がいたなんて。

「そう言うことだ。さて、久本、お前も当然でるだろう?」

篠宮先生が尋ねると久本は二つ返事でokした。

「でも、清十郎くんが私のこと友達って言ってくれるまででてあげません!」

こっぱずかしい。けれど、胸の奥があったかい。

「わ、わかったよ!俺と久本は今日から友達だ!それから頼む、この大会に一緒にでてくれないだろうか。」

友達か、悪くない響きだった。

「友達ならちゃんとアンリってよんでください!」

さっきまで、フワフワしている久本が緊張しているのだろうか、真剣な目で見てきた。

「アンリ、頼む。」

俺も真剣に答えた。

「はい!任されました!」

アンリは保健室の時と同じくらい笑顔になっていた。

「さて、もう1人はどうしようか、、、。

、、そうだ!篠宮先生!貴方が提案したことなんだ!貴方もでてくださいよ!」

篠宮先生は胸の前で大きくバッテンをつくり、

「この大会は生徒のみ出場資格があんだよ。教員の私にはでることは不可能だな。私にできるのは提案だけ。残りの1人は誰か探すこった。」

やはりダメか、もう1人の候補なんて人とのつながりがない俺にはいない。あとはアンリ頼みだった。

「アンリ、お前は誰か一緒に出てくれそうな奴に心当たりはないか?」

「残念ながら。でも、私と清十郎くん、2人で探せば、出てくれるって人を見つけることぐらいすぐできるのですよ!」

こういう時アンリの明るさは助かる。

「そうだな!あと約一ヶ月あるし、なんとかなるよな!それまでに俺は少しでも剣術をマスターしないとな!篠宮先生!よろしくお願いします!」

「私はきびしいからな!朝からみっちり鍛えてやるよ!」

篠宮先生はいつになく張り切っていた。



次の日の朝。

俺はいつもより2時間ほど早く学校に着いた。異能力の授業用ユニフォームを着てドームに向かう。中に入ると、体を動かしていた篠宮先生が遅かったなといってきた。

「時間ぴったりにきたんですが、、、。篠宮先生がはやすぎなんですよ。あ、先生に言われた通りに竹刀持ってきましたよ。」

そう、今日から朝は篠宮先生に剣術を教えてもらえることになったのだ。昼からは篠宮先生も異能力のクラブ活動の顧問などで時間がないらしいので、朝だけとなった。貴重な時間だ。頑張らねば。

「よし、時間もねぇんだ。実践で学べよ?」

ん?今なんて?

「え?ちょっと待って、、、。」

篠宮先生は俺に構わず竹刀を構えた。

「よし、はじめ!どっからでもこい。ねじ伏せてやる。」

俺はもうどうにでもなれ!と竹刀を構えた。

「行きますよ!」

、、、、、。

その日はボコボコにされた。

篠宮先生、強いとは思っていたが、これほどまで強いとは。予想を遥かに凌駕していた。

 学校が始まると。俺の傷だらけの顔を見て心配したのか、アンリが訪ねてきた。

「清十郎くん!?だ、だだ、大丈夫ですか!?」

「ああ、ありがとうアンリ。でも大丈夫だ。これくらいで根をあげてたら、異能力の差は埋められないよ。まだまだ頑張らないと。」

そう、最終的には、大会でまともに戦えるようになることなのだ。そう考えると、まだまだ足りないくらいだった。

 当面の課題がはっきりした。残り一ヶ月で十分戦えるくらいの力を手に入れること。そして、あと1人、共に大会に出る人を見つけること。前者は頑張ればなんとかなるだろう。しかし、あと1人を見つける方は大変そうだ、、、。




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