第2話 能力?
「っ、、ここは、、、?」
俺はベットに寝ていた、無力でいじめの的になっていた俺にはここがどこかすぐにわかる。ここは学校の保健室だ。しかし、何が起こったのだろうか、窓の外ははすでに小麦に染まった夕焼けになっていた。
「あっ!やっと目が覚めたのですね!」
声がする方に目をやると助けてやった女子生徒がいた。あの時は助けることで頭がいっぱいで、外見なんて、さほど気にしてはいなかったけれど、たんぽぽのようにふわふわした金髪に、少し垂れ目で弱々しく、ラピスラズリのように深くそれでいて雲なき青空より綺麗な碧眼に整った顔立ちをしている。俺とは大違いだ。俺なんて黒髪に顔を向かい合わせて右側に束になった赤い髪が数十本あるってことぐらいしか変わったところがなく、他はよくて中の上ぐらいの顔立ちだ、赤い髪は親に聞いても生まれつきってこと以外わからなかった。っておれのことはどうでもいいか、、、。
「あのあとすぐに貴方が倒れて大変だったのですよっ!本当に死んじゃったのかと思って気が気でなかったんですよぉ!」
その綺麗な女子生徒が俺を保健室まで連れて行ってくれたのだろう。
「君が倒れた俺を保健室まで運んでくれたのか?えっと、名前は、、、、。」
「そうなのですよ!、、、あ!私とした事が初対面では無いにしろ、自己紹介がまだだったのですよ。私は一年eの久本アンリなのですよ!助けていただいて、本当にありがとうなのですよ!」
まさか、同じ1年eに居たとは。自分のことでいっぱいいっぱいだったのと、俺が無能力者だからという差別、いじめもあってか俺に関わろうとする奴はいなかったからな。クラスのことでも酷く疎かった。
「俺も同じ一年eだ。名前は佐藤清十郎。と言っても有名だからもうわかっていると思うけれど、無能力者だよ。だからあんな事が起こること自体、奇跡としか言えない。自分でもなんであんな能力?が出たのか訳がわからないんだ。だから礼を言われる筋合いはないんじゃあないかな。」
「そんなはずないのですよ!私はこの目でちゃんと見たのですよ!あれは確かにあなたが発動した能力だったのですよ!遅めの異能力開花が起こったのですよ、きっと!」
いや違う。俺は無能力者だ。なのにも関わらず能力が発動した。しかも、じぶんが発動したという感覚はあったんだ。そのあとドッと体が重くなる感覚と頭痛に苛まれた。そして、それまでに親玉の異能力で痛めつけられ、火傷を負い、ダメージが蓄積されていた体が限界を迎えて目の前が真っ暗になって今に至るというわけだ。不良グループの親玉や飴玉君のお友達と同じ炎系の能力がおれにもあったという事なのだろうか?だが、なぜそんな簡単な能力がこんなに遅くに開花するのだろうか?度合いで言えば早くて赤ん坊、遅くても幼稚園児で取得する程度の能力発動条件だった。
俺は能力が無い分、子供の頃から異能力の授業を隅っこで見てきた。なので、簡単なものの異能力発動条件をみてきたのだ。だから、どの程度の条件の異能力がどの程度の年齢で開花するのかも、よく知っている。
「まてよ?火傷?ダメージが蓄積された?そういえば、体が痛く無い!嘘みたいに軽い!それどころか火傷跡すらないなんて!?」
俺がそういうと久本が何か得意げな顔になった。
「やーーっと、気づきましたか!!貴方運が良かったですね!私の異能力は治癒なのですよ!私が回復しなかったらもう大変だったんですからね!えっへん!」
そうなのか、ありがとう。
「なんで治癒系という需要の高い異能力者がEランクなのだろうか?そもそも、医者になるにはかかせないってのもあるが、どこでも活躍できる異能力だろうに。発動条件が厳しいのだろうか?それとも擬似的な異能力なのだろうか?」
「!?、清十郎くんはズバズバ言いますねぇ!ええ、そうですよ!大当たりですよ!発動条件は経過過程を見ていたものを対象として、発動対象に触れ、なおかつリセットと詠唱することで経過過程でおこったことを無かったことにできるんですよ!だから治癒系の異能力じゃないのですよ!経過過程の最大時間は約5分といったところなのですよ!」
やらかした。だが、自分の異能力の発動条件を全部喋ってしまうとは、信頼されきっているのかな?、はたまた、ちょっとおバカさんなだけなのかな?
「すまない、心の声と言うつもりだったことを取り間違えた。」
久本がへんなものを見る目で俺を見てくる。
「清十郎くんは、とっても変な人なのですよ、、、。」
、、、、。
「ま、まあ、でも、その能力だったら、治癒系の異能力よりも有用だとおもうが?なんでクラスがeなんだ?」
これは本音だ。俺みたいな無能者は最低ランクのe確定だとしても、過程をなかったことにできるなら、自分に掛けまくれば、無敵の能力だろう。こうした応用も効くのも良いしな。少なくともbにはなれるだろうけれど?
「それが使いすぎると頭がくらくらしてきて倒れちゃうから連発は4-5回が限界なのですよ、、、。あと、いくら元どうりだとしても痛いものは痛いのですよ?いちばんの理由は発動条件が難しすぎて試験で良い結果がでなかっただけなんですよ!」
まぁ、この能力なら経験がものをいうだろうし、応用も経験があってこそだしな。この子はeクラスでもすぐ周りを追い抜く部類だろう。
そして、何故、久本が襲われていたかも分かった、可愛いからってのも勿論あるだろうが、久本の能力を乱用すれば荒稼ぎできる、例えば、持ち主が鍵をかけるのを見ておいたものの施錠を外し放題だし、車やバイクや自転車も盗み放題だ。更には無人に限るが、くじ引きなどの確率のものも当て放題だな。考えればいくらでも出てきそうだ。
「久本、これからまた何かあれば言ってくれ、微力だが力になるから。」
今回の奴ら意外にも今の実力じゃ、いいカモと言ったところだろう、またあんな事が起こるのも容易に想定できる。今回の奴らは必ず仕返しにくるはずだしな。
「清十郎くん、ありがとうなのですよ!」
久本は満面の笑みになった。
家に帰ると事が起こりすぎてどっと疲れたのでその日はすぐ床に就いた。
次の日、俺は初めて異能力の授業に参加した。3人組はビクビクしていた。俺が能力を使った、いや、使えた事を知って、これまで俺にしたことの復讐をされまいかと考えているのだろう。本当にわかりやすい。
異能力の授業はどんな不測の事態が起ころうとも対応できるように、中ではダメージが極限まで減らされる結界が貼られたドーム型の建物の中で行われる。極力まで危険はないが、こんな状況下でも最新の注意を払われる。
やはり、引っかかる点は多いにしろ、能力をつかった感覚はあったし、その事が嬉しかったから、もう一度使いたいという気持ちでいっぱいだった。
しかし、そう簡単には事がうまくすすむはずもなく、異能力授業担当兼、クラス担任兼、竹刀を持った篠宮先生に呼び止められた、
「おい佐藤。」
篠宮先生は長髪を後ろで括っていて、スポーティな格好で男勝りな性格、出るところが出ているので男子どもからの人気が高い。言葉が少し荒いが一応女という性別だ。
「一応は余計だっ!それより、お前は異能力まだ開花してないだろうに。急にどうしたんだい?」
頭に拳骨を喰らった。毎度、人の心の中を読まないで欲しい。
そうして、俺は昨日のことを打ち明けた。
「ははぁ〜ん、結界がないところでそんな危ないことしてたんだぁ〜?」
ヤバイ、先生に(〜)がつくときは決まって、激おこ状態だ。
弁明しなければ、殺られる、、、。
「ち、違うんですよ!そ、そう!あの場ではあれが最善の行動だったんですよ!あの行動をしなければ今頃大変なことにぃ!?」
刀が飛んできた、大事なことなのでもう一度言う、竹刀が、ではない。本物の刀だ、篠宮先生の異能力である、、、。
篠宮先生のは実にシンプル、握ったものをあらゆる刃物に変換可能!その逆も然り!以上!こんなこと言っている場合ではない。刃物の雨が降ってくる。
「解説ありがとっよっと。校舎の一階の出口すぐに職員室があったのに最善の行動だったんだなぁ〜?っと。」
刃物を投げながら説教しないで欲しい。命を大事に。
「能力がたまたま開花して、相手グループがたまたま引いたおかげで助かったが、もし開花しなかったらどうするつもりだったんだろうなぁ〜?っと。お前能力無しでどう勝つつもりだったんだぁ〜?っと。」
無数の刀が壁に刺さり俺型のシルエットができていた。
「めっそうもございません!今後このような失態は慎みまするゆえ、どうか、どうかご慈悲をぉ!」
騒ぎが大きくなってか、久本が俺を庇いにやってきた、
「そうなのですよ!篠宮先生!清十郎くんは結構変な人だけど、私の命の恩人なのですよ!」
おい、結構変な人はとっても余計だ。
「とにかくだ!今後はこのような事がないように!帰りに反省文提出しろ!相手グループには私から一喝いれといてやるよ。」
うむ、頼もしいかぎりである。
3人組はこっ酷く怒られていた。最初は泣いて謝っていたが、最後は篠宮先生と肩を組んで笑っていた。ここも男子に支持されているポイントなのだろうが。
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