俺にできて他人にはできないこと?

@NeroTempest

第1話 無力?

 俺の名前は佐藤清十郎、星海高校の1年eに属している。

 さて、この世界の話をしよう。今から約500年前、ある病院で宙に浮く赤ん坊が発見された。これを機に次々と赤ん坊、あるいは幼児が各々違う異能力に目覚めていった。この個人差は開花する能力の難度に比例する。発動条件が軽い異能力は開花する年齢も早く、重い条件ならその分発動条件を見つけるのに時間がかかり開花する年齢も遅くなるという事だ。例を挙げれば、対象に触れると発動や、溜めることで発動、詠唱することで発動などの一動作のみで発動できる異能力は簡単に開花するが、これが溜めた上で、対象に触り、詠唱するというように混合しただけでも開花するのに時間がかかる、また場所を指定なども重い条件の部類だろう。しかし、異例で遅くても、小6が最長だった。詠唱の言葉はふっと頭に流れてくるらしい。攻撃的な能力や家事に役立つ便利能力、手から体の糖分を使用してお菓子が出てくるなどの一芸程度の能力など各々様々な違った能力がある。全く同じ能力というものはこれまで現れたことはない。似てるようでいても発動条件や能力のベクトルが若干違っているようなものがほとんどだ。

 その後異能力を持つ者は加速度的に増えていき、今現在異能力を持たない者はこの世界にいない()

 その昔、異能力者は忌み嫌われて、魔女狩りになぞっらえた異能力狩りなどという馬鹿げた思想が出てきたらしいが、その後も異能力者が増え続けた結果そんな思想も薄れていき、異能力者が人口の7-8割りを締めたぐらいにその思想に加担した者への逆襲と銘打って暴れ出した異能力者もいたらしい。すぐに暴動はおさまったが、そうして異能力を持たざる前人類は時間と共にいなくなり異能力者だけでできた社会が形成されていったらしい。歴史の授業でならった。

 こうして異能力が現れたことにより異能力を使った犯罪や戦争が増え、それらを抑えるために必要なのも異能力、、、っと言ったふうに異能力の強さはこの世での地位すら決めかねないものとなっていた。その結果、学校では能力によってランク決めされ高い順にa~eのクラスに振り分けられる。俺は今までオールeだ。、、、



「、、、!」

「、、、、っ。、、、!」

「、、、、、、、い、!、、、!!」

「おい!無能!なに無視してんだよっ!!」

ゴッ、

放課後で俺と俺を囲む男ども3人以外は空席の1-Eのクラスに鈍い音が響いた。何度目だろうか何度呼んでも返事がない俺佐藤清十郎に腹を立てた3人組の1人がおれを殴った。ここでやっと自分の世界からもどってきた。お決まりだ。

「痛いな、なんだよ?、、、」

なんだよ?とは言ったものの、もう返ってくる答えは日頃のパターンで想定がつく。俺はクラスの男どものいじめの的にちょうどよいのだ。

「今日も居残り掃除変わりにやっといてくれや?無能くんw」

「嫌だよ、、もう何度目だよ、、、」

「あ?なんか文句でもあんのか?」

と徐に3人は異能力を発動させて脅してくる。1人は炎系の異能力を手に纏っている。1人は電気を纏っている。クラスは同じeなので、どちらも規模は小さいが十分脅威だ。しかし、最後の1人は飴玉を手のひらから出している?お前いるか?と言いたいがそんなことをした途端滅多打ちだろう。だが、見慣れた光景だが怖いものは怖い。1人を除いてだが、、、。俺はYESと答えるしかなかった。痛いのはごめんだ。

「カツアゲしないだけありがたく思えよ、無能くんwじゃよろしくw、、よしお前らゲーセンでもいこーぜ!」

「そうだなぁ!こんな奴ほっといて、いこうぜ!それにしてもwびびりすぎなんだよ。まぁ無能だからしょうがないかぁw」

「飴玉食うか?」

、、、、クソ

「、、、今時カツアゲなんて異能力が出てくる前の古くさいもんやるのはかっこ悪いみたいな風潮があるからだろうが。」

 なぜ俺は日常的に起こるいじめに自分の異能力で対抗しないのか?異能力が飴玉野郎と同じく対抗手段にならないから?違うな。それとも飴玉野郎と違い対抗手段はあるにはあるが炎を纏った奴、電気を纏った奴よりも弱い力だと確信しているから?これも違うな。察しのいい奴はもうわかったんじゃないか?

 そう何を隠そう、俺はそもそも異能力なんてものを持ってないのだ。だから、俺はこの世界での一番の弱者だ。飴玉野郎にも劣っている(タイマンなら負ける気はしない。)が、赤ん坊にも劣る。普通早くて赤ん坊、遅くても小学生には自分の異能力が開花し、使い方を覚えて自在に扱えるようになる。しかし、俺には異能力がなかった。

 このことは一時期マスコミにも勝手に報道された。その時、中学だった俺はとてつもなく悩んでいた。俺だけなぜ中学になっても異能力が開花しないのだろうか、、、。これまで異能力の授業は隅っこで見ているだけしかできなかった。そしてマスコミの番組には、『約500年ぶり!?前人類あらわる!?』なんて馬鹿げたタイトルもつけられた。だがその時の俺はその番組に出て少しでも同じ境遇の人やこの問題を解決した人に助けてもらいたいと思っていたんだろう。だが、無駄だった。最後の希望として、異能力の専門家に頼んでコツのようなアドバイスのようなどっちつかずな意見をもらったが(今思えば詐欺師だったかもしれない。)残った事実は俺が無能力者だと言うことだけだった。

 今時、職につくにも異能力は必須とされている。例えば、水系の異能力は消防士になるのに必須、警察に入るには拘束系の異能力か、制圧できるほどの強力な異能力などが必須だ。でないと、返り討ちに遭うだけだからだ。

まぁそんなわけで、中学や高校、はたまた保育園やら幼稚園ですら異能力に触れる機会がある。今や一般授業の他に異能力の授業もあるほどだ。昔とはがらりとかわっている。異能力がないと生活すら危ういのだ。だが、俺には何もない。何もできやしない、、、。

俺にできて他人にできないことなんてないのだ。

だが諦めてもいない。俺だって日頃から申し訳程度にしかならんが筋トレもしてるし、条件を探ったりなど努力はしている。いつか詠唱が流れてこないかも期待もしている。そして、何か俺にできて他人にできないことはないかを探すことが俺の日課だ。だが、そんなこんなでもう高校に入って2ヶ月をすぎようとしていた。

「いつか俺にしかない力を見つけて人助けに使ってみせるからな!」

そういや、死んだじいちゃんにお前には能力こそないがその正義感は大きな武器じゃって言われたっけか。

 、、、!!いかんいかん、こんなこと言ってる場合じゃねぇ早く掃除終わらせないと。



 居残り掃除が終わりゴミ箱のゴミ袋のゴミをすてに校舎から出ようとした時、校舎裏から悲鳴が聞こえた。

「や、やめてください!」

どうしたんだっ!?俺は校舎裏に急いだ。

急いで向かうとそこにはこの高校の2年と思わしき不良グループがいた。着崩していてわかりにくいがバッチが2年のものだ、学年によってバッチが異なるのだ。さっき俺に居残り掃除を押し付けてきた3人組もそこにいた。計10にんほどで女子生徒1名を囲い、今にも襲い掛かろうとしていた。

「なーなー、俺らと楽しいことしようぜ?な?」

と不良グループの親玉なのだろうか。徐に手に纏った炎系の異能力を見せ脅している男がいた。規模がでかい、威力はさっき俺を脅したやつの比じゃないだろう。ランクはcと言ったところだろうか、その証拠に、手の周りにひのうずができていた。

 だが、早く助けねばと思うが足が動かない。どうして、、、俺はなんて無力なんだ。

「なんでだよ、、、、。俺にもっと力があれば、、、、、。」

 一度止まってしまった瞬間、女子生徒の怯え切って今にも涙をこぼしそうな顔がみえた。可愛い顔が台無しだ。俺は居てもたってもいられない気持ちになった。と思った時にはもう親玉めがけて突っ込んでいた。

「やめろぉぉ!!!」

グループの取り巻きは一度は面食らったようだが、俺をいじめていた3人組は俺だとわかった瞬間にその表情に不敵な笑みが溢れていた。

「「「なんだぁ?誰かと思えば天下の無能君じゃないっすかぁwなに?まさか無能のお前がヒーロー気取りか?」」」

3人組が俺を囃立て、3人息ぴったりに並んで俺を通せんぼし、能力を発動せんと、各々の異能力を手に纏っただが、俺はこいつらの能力は腐るほど見てきた。こいつらは飴玉野郎以外の2人とも能力を纏った手のひらを接触しないと発動しないのだ。飛んだりしてこない。ならば、発動した能力を溜めている手以外には自分の能力だとしてもダメージを負うはず。そして、他の奴らは面食らってて動けてない。

「これならっ!」

俺は、構わず手に持ったゴミ袋を炎系の奴めがけてぶつけ、ひるませた。それも燃えやすい可燃ゴミだ。いくらい異能力者といえど人の子だ、熱いものは熱い。ゴミが炎を纏った手に接触し能力が発動した。ゴミは面白いほどよく燃え、綺麗に並んでいた3人組に燃え移った。

「あっちぃーーー!」

「何してやがんだよ!」

「俺のせいだってのか!!」

 俺は、転がる3人組を無視して親玉目掛けてタックルした。もう、どうにでもなれ!!

「いまだ!逃げろ!!早く!」

しかし、

「で、でも、、。足がぁ、、、。」

女子生徒は恐怖で足がすくんでいた。

ヤバイ。もう手が無い。

「あー、うざってぇ!!離れろ!」

!!!

なにがおこったのだろうか、

俺は校舎に叩きつけられていた。親玉の異能力だろうか。親玉から俺へひいた直線の周りに火柱が立っている。親玉の異能力がいじめ3人組の炎系と似ているから接触系だと踏んでいたが、大きな間違いだったらしい。

 俺の右肩周辺はやけどを負っていた。

「おい女!お前もこうなりたくなけりゃ、大人しく、俺の言うことをきくんだなぁ?」

親玉は俺の方を向いた。完全に頭に血が上っている。

「わきまえろ無能!異能力のないお前には何もできやしないんだよwあー、もうがまんならねぇ、もういっそ、殺してやるよw」

親玉の手が再び炎に包まれる。

クソ、、、!クソ、、、、!!クソ、、、、、!!!クソ!!!

俺はなんで無力なんだ、俺にもこんな力があれば、、、。

「死ねぇ!!」

火柱とともに炎がおしよせてきた。

「うわぁぁぁぁー!!」

俺は徐に手を前に出した。その時、親玉の放った炎より一回り大きい炎が俺の手から放たれ火柱とともに親玉の炎とぶつかり合った、俺はなにがおこったのか、わけがわからなかった。

「な、なんだと!?」

俺の炎の方が勝り、親玉は囲んでいた子分の元へ吹き飛ばされた。俺は急に体が重くなり、激しい頭痛がおこった。なんなんだ!?だが、ここで倒れるわけにはいかないのだ。

傷だらけになりながら俺は最後の力を振り絞った。

「次に食らいたい奴はどいつだ?」

はったりだ、そもそも俺にこんな力はないはずだ。そもそも持っていたとしてもこの体では無理だろう。

大人しく逃げてくれ、、、!

「クソ!覚えてろよ!」

2年のグループの子分達は親玉を回収して逃げ去っていった、

「「「まってくださいよ!」」」

転がり回ってた3人組もあとをおうような後を追うようにして行ってしまった。

「よかった、、、。」

俺は意識を失った。

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