木曜日Ⅳ
先輩の内部で決定的な崩壊が起きた。それは僕が起こしたものだけれど、意識すら手放したような先輩の姿に僕は今更のように動揺していた。進む道を間違えたのではないかと、後ろを振り返ってばかりいる。
でも、そこにあるのは深い闇で、道はとうに閉ざされている。戻ることはできない、一本道。ならば、行くところまで行かなければならない。
その覚悟が固まる前に僕は行動を起こす。きっといつまでもそんなものはできないから。
楕円形の小さな機械を取り出して、先輩の眼前にかざす。その懐かしさに思わず僕も泣きそうになる。数年前に流行った携帯ゲーム機。僕の大切な友人の遺品。
「あ」
先輩の虚ろな目がぐるりと動く。ゲーム機に焦点が合う。大きく見開いた目の縁から、ぼろりぼろりと涙がこぼれていく。声もなく、泣いている。暗い室内でふたり、声もなく、泣いている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます