金曜日Ⅳ

ベッドの上に寝ころび、時折思い出したように瞬きをする以外にはなにもない。七色先輩はいまあの日にいるのかもしれない。


画面の罅割れたスマートフォンを出す。先輩の色のない目が発作のようにぶるりと震える。


「あ」


それはもはや意味のある言葉ではない。反射のように口から洩れた声が空気をかろうじて震わせた。涙はもうない。代わりに口の端から、透明な唾液が音もなく流れていくばかりだった。

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