第170話 一行怪談170
空から降ってきた大量の魚はあっという間に町を埋め尽くし、道にはその魚たちに押し潰されて死んだたくさんの人々の死体が転がっている。
「空に浮かんだ顔が、だんだんこっちに近づいてくるんだ」と怯えていた友人が失踪した翌日、何の気なしに空を見上げると、雲の上に浮かぶ何かと目が合った気がした。
空に浮かぶ雲が緑色の日は、太陽が沈むまで親指を隠し続けなければならない。
空を見上げるたびに、私の体が一cmずつ宙に浮かび上がり、十cmほど浮かんだところで地面を見下ろすと、私の足は会社の屋上の端へと歩を進める瞬間だった。
意地悪なクラスメイトは先日、泣き叫んでもがきながら猛スピードで空に浮いていき、やがて姿が見えなくなるまでを多数の人たちに目撃された。
壁に飾っていた星形のオブジェが近くに置いていた地球儀に刺さった直後、空から大きな大きな星形の何かが家に向かって落ちてきた。
空から突如伸びてきた手は近くにいた人を掴むと、「これじゃない」とその人を放り投げ、パニックになる人たちを次々と掴んでは遠くに放り投げ、やがて一人の少女を掴んで「これでいい」という声が聞こえたかと思うと、その手と少女は一瞬で姿を消し、あとに残るは血を流して倒れ伏す人々の沈黙のみ。
空から落ちてきた小さな肉塊は、近くにいた女の腹の中へと入り込み、やがてその女の摂取した栄養を吸収してぐんぐん成長していき、今では女の背丈を超すほど巨大に膨らんでなお、肉塊がいまだに腹から出てくる気配はない。
空に浮かぶ飛行機の側面に書かれた、「助けて、この人たち偽物です」という文言に気づく人間は、ごく少数でしかない。
空から無数の金切り声が響く夜は、この町のどこかで殺人が行われたという証拠になるため、各自でその動画を録音しておくように。
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