第171話 一行怪談171

 炊飯器の蓋を開けると、炊きあがった飯の代わりに無数の羽虫がびっしりと釜の中を埋めていた。


 我が家の健康の秘訣は、毎朝、先祖の墓の中から現れる手のひらサイズの芋虫を捕まえ、素揚げにして食べることです。


 娘の血を蜜として与えている蝶の羽の模様が、満面の笑みを浮かべた娘の顔のように変わっていく。


 遺体の検死のために腹を切ると、腸と思われた巨大なミミズが一匹、もぞもぞと腹の中を蠢いていた。


 蟻の巣を駆除してからというもの、腕の中を何かが蠢いている気がしたため病院へ行くと、腕全体に蟻の巣があちこちあることがレントゲン写真から判明した。


 家で飼う鈴虫の鳴き声が、年々赤子の泣き声に似ていくのは気のせいだろうか。


 いつも世話になっているご近所の宮本さんの口からは、今日も話すたびに蛆虫が溢れ出している。


 父の耳から飛び出す蠅は、潰しても潰しても新しい蠅が父の耳から出てくるので、最近は家族みんなで放置している。


 彼女の家では、多くの羽虫の死骸が浮かんだ池の水が、何よりのご馳走となっている。


 兄は毎晩必ず、人の顔をした蜂を集めて酒瓶に入れ、その中に酒を入れたものを翌朝飲むという健康法を試しています。

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