第168話 一行怪談168

 川の向こう岸で手招きする、子どもの頃に死んだ親友は険しい顔で「絶対にこっちに来るな」と叫んでいる。


 川底の拳大ほどの大きさの石には時々、血痕のような模様がついた石が混ざっているが、万が一それを拾ってしまった時は、すぐにその石で誰かの頭を殴り付けること。


 ある川の水はとても綺麗で飲み水としても利用されているが、その水を飲んだ者たちは一ヶ月以内に必ず風呂場の浴槽で水死体となって発見される。


 川で泳いでいると、私の前を泳ぐ子どもらしき存在がいて、何の気なしにその後をついていくといきなり引き上げられてしまい驚いていると、私を引き上げた老人は「間に合ったか」と安堵の表情を見せ、老人の視線の先を見ると私の目前は滝壺だった。


 川で釣った鮎の何匹かに、人間の手足のようなものが生えている。


 今でも浴槽に湯を溜めると、あの時川に流された兄が湯の中からこちらを恨めしげに見上げる。


 川で見つかった遺体には足が三本生えており、「ミカサ様が死んでしまった」と村の老人たちが騒ぐ中、増水した川の水が激しい勢いで村へと迫ってくる。


 川の中を進んでいると、時々こつぜんと消えてしまう人たちがいるが、その行方について詮索してはならない。


 名字に「川」がつく人は、うちの村の川で最低一時間は泳ぐこと。


「川に近づいてはならない」という両親の忠告を無視して川で遊び、夕方頃に家に帰るとそこはまるで廃墟のようになっていて、いつの間にか両親の顔もおぼろげで、その前に俺は一体誰なんだ。

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