第167話 一行怪談167
山の神様に連れ去られた男が自分の存在に気づいてもらうために、山で叫ぶ人の叫び声を真似て返事をするようになったのが、山彦の由縁だと言われている。
山で撮影した記念写真には、右端にいる担任の顔を覆う真っ黒な手が写っていたが、それを指摘した生徒が次々と不慮の事故に見舞われたので、この件はタブーになっている。
山道を進む私たちの背後を追う、無数の足音。
山奥に進むにつれ、鳥がさえずりや木が揺れる音、風が吹く音さえも聞こえないことに気づいた時、前からとてつもない勢いで草木をかき分ける大きな音がこちらに近づいてきた。
切り株から念仏を唱える声が聞こえた時、その日は直ちに作業を中断するというのが、林業を営む人たちの間での決まりだ。
山で迷った時、「おいでおいで」という声が上から聞こえた時はその方向に向かって歩き、下から声が聞こえた時はその声とは反対の方向へ歩くこと。
「赤い着物の女の言う通り、あいつらは化け物だった」と供述する男は、山で遭難して一週間後に救助され、その翌日に家族を皆殺しにした罪に問われている。
「山の神様が助けてくれるって言ったから」とうなだれた子どもの供述通りに山の中を捜索すると、行方不明になっていたもう一人の子どもが、何者かによって腸を全て食い荒らされた遺体で発見された。
山で聞こえた男の声は耳にこびりつき、今では親しい人たちの声もその男の声に変わってしまった。
山で出会ったお地蔵さまは、えらく私を気に入ったそうで、必ず私の半径一メートル以内に出没するようになった。
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