第162話 一行怪談162
二十年前に貼られた指名手配犯の写真の男に瓜二つな、今年成人する私の息子。
黒目が三つある夫と似ても似つかない義父だが、義父の弟が夫と同じ目をしていることに気づき、私をいびってきた義母の弱みを握ることができたとほくそ笑む。
天井から生えている手が拳を握っている日は親戚の訃報が届き、手の平を見せている日は友人が不慮の事故に遭う。
ケタケタという笑い声がひっきりなしに、実家の靴箱から聞こえてくる。
啜っても啜っても中身が減らない、二時間は食べ続けているカップラーメン。
スーパーの冷凍食品が置かれているコーナーに、「胎児の脳味噌」なるものが特売で売られている。
嫌味な上司がある日を境に人当たりのいい人物に変わったのだが、その日からだんだんと上司の顔が渦を巻くようにねじれていっている。
今日も教室の真ん中で首を吊っている、半年前に自殺した半透明のクラスメイト。
膨らませた風船が割れた後には、頭皮がついた髪の束が辺りを汚した。
タイムカプセルを掘り起こして中を見ると、行方不明だった担任が当時と変わらぬ姿で不思議そうに私たちを見上げた。
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