第161話 一行怪談161
近所の小学校の卒業式で配られる紅白饅頭の表面には、戦前に自殺した女生徒の苦悶の表情が浮かび上がることが度々ある。
祖母が愛用していたオペラグラスは、そのオペラグラスに選ばれた者以外の人間が使用すると、数秒の沈黙の後に絶叫した彼らは自身の目をくり抜いて息絶える。
病室のベッドに寝転んで天井を数分間を見つめ続けた後に窓の外へ目を向けると、まれに逆さ吊りになった少年がニコニコと笑いながらこちらに手を振る場面を目撃することがある。
ろうそくに灯った青白い炎を見て、彼女の魂はこの世で最も美しいという私の見立ては間違っていなかったのだと、ろうそくの上でゆらゆらと揺らめく彼女の火の玉をうっとり眺めながら床に横たわる彼女の亡骸をどう処分しようかと算段した。
割った卵の中から出てきたのは、白身代わりの白髪が包むようにまとまりついている黄身代わりの拳大ほどの大きさの目玉。
出店で買ったかき氷を口にしたところ、口に広がる香しい死臭に、幼い頃に廃屋で見たあの腐乱死体が脳裏によみがえる。
友人の腕に彫られた花魁の入れ墨は、夜な夜な友人にかつて自分が受けたひどい仕打ちを泣きながら話すそうなので、最近の友人はノイローゼ気味だ。
近所で厄介者扱いされている老人が死んでからというもの、その老人を特に毛嫌いしていた近所の人間が次々と不幸な目に遭い、神社の神主に泣きついた彼らに対して神主は「その老人の守護霊が許してくれない限りはどうにもならない」と悲しげに首を振ったそうな。
山の方向から複数の子どもの笑い声が聞こえる日は、十二歳以下の子どもは全て白い布で覆ってその日は一日中家から出させないこと。
息子の声に導かれるままリビングに向かったところ、玄関から「ただいま」と元気な息子の声が聞こえてきたが、「あいつは偽物だよ」という息子の声はリビングから相変わらず聞こえており、私の後ろからは「どうしたの」と不思議そうな息子の声が投げかけられ、私の腕の中の息子はそんな状況で小さな寝息を立てている。
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