第148話 一行怪談148

 私はアパートの一回に住んでいるのだが、住み慣れた今でも時々、床からコンコンとノックをされる。


 額の汗を拭ったハンカチには、青紫色のシミがべっとりとついていた。


 私が夫と結婚してから、義母はどんどん若返り、義姉はどんどん老いていってしまい、十年も経つ頃には義母は小学生ほどの子どもの姿となり、義姉はすっかり年老いた老婆の姿になってしまった。


 義父がかつて私の母と関係を持っていた男と分かって以来、「愛する人と一つになりたい」という亡き母の願いを叶えるため、母の遺灰を義父の料理にこっそり混ぜている。


 食べた梅干しの種が目玉だった場合、その日のうちに必ず目を負傷するというのが、我が家で言い伝えられている。


 義兄の背中に張り付いている黒焦げの男の顔がだんだんと義兄の顔になっているため、私は義兄の運命を悟った。


 負けん気が強い義妹が泣きながらストーカーの相談をしてきたので、やっと頼りがいのある姿を見せられると、部屋にある義妹の盗撮写真の隠し場所を考えながら義妹の話を聞く。


 義弟は時々私のことを訝しげに見つめるので、もうこの世にはいない私の姿が見えているのかと、義実家に出る頻度を減らそうかと検討中だ。


 新しいハンドクリームを使うようになってから、皮膚からまるで鱗のようなものが浮かんできた。


 我が家の壁にかかったカレンダーは時々、ある日付の数字が紙から浮き出してくるくると回ったり、ピョンピョンと跳び跳ねたりしているのだが、その日付は親族の誰かが亡くなる日だ。

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