第146話 一行怪談146
根性論を生徒に強要していた教師は、ある日、曰く付きの池に勝手に入り込み、案の定、池の主を怒らせてそこに引きずり込まれそうになり、たまたま近くを通りかかった生徒に助けを求めたのだが、「根性で何とかしてくださいよ」と鼻で笑われ見捨てられたそうで、それ以来、その池からはその教師の怨嗟の声が止まないので、池の近くに住む私たち家族にとっては傍迷惑で仕方ない。
早口でしゃべる癖がある兄に「もう少しゆっくり喋ってくれないか」と言ったところ、「早く喋らないとあいつらに乗っ取られるんだよ」と青ざめた顔で答える兄の後ろで、ケケケと甲高い笑い声が聞こえた。
川底で水草のように揺れるものが何かと思って近づいたところ、それはとても薄っぺらくて長い腕であったことに気づいた時、その腕がゆっくりと私の足に絡みついてきた。
「この家にはとんでもない邪気が広がっています」と口の端から唾を飛ばして話す自称霊能力者の後ろで、長年我が家にずっと取り憑いていた髪の長い女がいやらしい笑みを浮かべているのを見て、ようやく新しい獲物を見つけてくれたかと、家族全員胸を撫で下ろしていた。
妻の寝言が煩いので妻を起こそうと妻の方へ顔を向けると、私に背を向けた妻の後頭部が裂け、「そもそもお前が何もかも悪い!」という妻の叫び声と共に、後頭部の裂け目から現れた舌が私の腕を捕らえた。
弟が行方不明になって数十年が経つが、ある日を境に「弟の姿を見た」という近所の人の証言が続々と集まり、父も母も姉も「あの子は昔のままだった」と弟の姿を目撃したらしいのだが、弟の居場所を唯一知っている私は、弟を別の場所にそろそろ移動させないといけないと頭を抱えた。
サングラスをかけた男がこちらに近づいて来るので、「こいつは見える奴か」と慌てて自分の姿を消す。
天井の隙間から垂れ下がったロープが、おいでおいでをするように左右にゆらゆらと揺れている。
娘の上履きを洗っていると、そんなに汚れていないのに洗剤は赤黒く染まっていき、すすいだ水は赤茶色のように変わって途切れない。
息子は夫のことを「じいじ」と呼び、義父のことを「パパ」と呼ぶので、ギフトの関係を続けるために息子を消してしまうべきか、否か。
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