第130話 一行怪談130

 飼い犬の調子が悪いので病院に連れて行くと、胃の中が行方不明になった祖父の将棋の駒でいっぱいになっていた。


 近所の本屋に並んだ書籍の一つに、立ち読みしたら最後まで読まないと心臓発作を起こす書籍があるらしいと噂になり、その噂が本当か試すものが後を絶たないが、実行したものは皆突然風呂場で倒れるらしい。


 季節外れなのに炬燵を出している理由は、机から生えたいくつもの足を見なくて済むからです。


 冷蔵庫に入れていたスポーツドリンクを飲むと、なぜか汗の味がした。


 雑貨屋で買ったポストカードに、幼い頃の私と胎児の形をした肉塊が並んで描かれているイラストがある。


 廃墟を探索するホラーゲームの舞台の家の間取りや屋敷の中の小物が、今も両親が住んでいる実家と全く同じだった。


 ここ一週間の天気予報は、「細かく切り刻まれた人間の内臓が降ってくるので、感染症にご注意ください」というものだった。


 私がさっきから食べているものは、果たして本当に白飯なのだろうかと、口の端からこぼれた蛆虫を見て思う。


 窓から差し込む日の光は先週から青紫色のものに変わっていることに気づいているのはどうやら私だけのようだと、青紫色に変色した肌に変わったことを気にしていない様子の家族を見て思う。


 今から特急が参ります、死にたい方はどうぞ飛び込んでください。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る