第127話 一行怪談127
彼女に結婚を申し込みたいのだが、彼女の後ろにいる青白い顔の女が良い顔をしないため、なかなか切り出せない。
妊娠した私を捨てた彼が数年後に野犬に襲われて死んだというニュースを見て、牙を舐めて喉をぐるぐると慣らす我が子の頭を撫でる。
黙り込んだ母はしばらくすると、「最初からこうすればよかった」と父の喉元に噛み付いて肉を食い千切った。
我が家に取り憑いていた貧乏神を捌いて鍋料理を作ったところ、それ以来家族の収入が上がって宝くじも当選していいことづくめだったが、数年後に祖父が内臓が全てなくなった遺体として見つかった。
近所の橘さんは週に一度、頭に生えた百合の花に塩水をやっている。
髪を赤く染めてからというもの、道行く人たちに「私たちのためにありがとう」と涙を流して拝まれるようになった。
「拾ってください」という紙が貼られて蓋が閉じている段ボールの箱が道端に捨てられているのだが、箱の中からケタケタと笑う声が響いているので、通行人たちは皆見ないふりをしている。
飼い猫が「あいうえお」と話した日は、近所の老人が変死体で見つかる日。
話題のハンドクリームを塗るようになってから、手が陶器の人形のような質感に変わっている気がする。
古い缶詰を開けてみると、開封前はあんなに膨らんでいたのに、中を覗いてみると干からびたへその緒が一つあるだけ。
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