第124話 一行怪談124

 梅干しの種の中から、赤黒いどろりとした液体が流れ出た。


 赤子の泣き声が煩いが、隣の夫婦の子どもは先日亡くなったことを思い出す。


 にきびを潰すと、中から一mほどの長さの白い虫が出てきた。


 古い楽譜に描かれた音符は、夜中になると譜面上で踊り出す。


 姉のブランケットは油断すると、使用者の体を締め上げてしまう。


 午後三時四十分にかかってきた電話の主の正体を尋ねてはいけない。


 布団全体から潮の匂いがする時は、海から死体が上がる時だ。


 鮃を捌くと、中から数年前に亡くなった父の愛用の将棋の駒が出てきた。


 目薬を差すと、それから数分間は死者と生者の区別がつかない。


 夜中に小学校から流れる放送は、一言一句聞き逃さないこと。

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