第111話 一行怪談111

 先祖が呪いをかけられたため、私の家では生まれてきた子どもは三歳になるまで梟の剥製の頭部を頭に被らないといけない、というしきたりがある。


 生まれてきた我が子は数ヶ月が経った今も、亡くなる直前の祖父の顔と瓜二つだ。


 伯母は口煩く「押し入れに食べ物を入れちゃダメよ」と言っていたが、その意味が手遅れになった今になって気づいた。


 黒板を爪で引っ掻く音が、私の枕から聞こえる。


 エアコンをつけている間は、女のすすり泣きが部屋に響く。


 私が持っている十円玉は、兄の血でべったりと染まっていて落ちない。


 ごみ捨て場に黄色いキャップが落ちている日は、一日中鏡を見てはいけない。


 街中に貼られているポスターに、「会いたい」という言葉だけが書かれたものを見つけた時はご用心。


 テレビでは近所が火の海になっているが、窓の外は相変わらず穏やかな日常が流れている。


 玄関の扉の内側に、血文字で数字が書き連ねるようになって丸一ヶ月。

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