第80話 一行怪談80

 不眠症に効く薬の治験結果は、治験の対象者の体から植物のようなものが生え対象者の体を包み込んでしまったため失敗に終わった。


 小学校の給食に出てきたイモリの姿揚げが忘れられないのだが、友人達は皆「そんなものは食べたことがない」と怪訝そうな顔をする。


 近所の空き家には頭から血を流した女の霊が出ると噂だが、そろそろ彼女の遺体を別の場所に移すべきかもしれない。


 薬局で買った化粧水を試すとみるみるうちに皴が減っていき、やがて目鼻や口の境目も分からなくなってきた。


 友人がある日を境に腕に包帯を巻くようになり徐々にその範囲が広がっていったと思うと、突然包帯を外して腕があるはずの空間を見つめて「実験は成功した」と高笑いした。


 空から雪が降ってきたかと思うと、地面に落ちた途端ぐしゃりと音を立てて雪と思われたものから緑色の液体が滲み出てきた。


 蟻塚に水を流し込むという遊びをしていた友人は、ある晩に体中の穴という穴から蟻が侵入してのたうち回って死んだらしい。


 ストレスがたまった夜の晩酌には、冷凍しておいた人間の足の指のから揚げが一番旨い。


 押入れの隙間からこちらを手招きする青白く細長い腕に誘われた弟が押し入れの中に入ってからというもの、弟と同じ年くらいの小さな子どもの手が新たに加わった。


 良い出汁の匂いがすると思ったら叔父のあばら骨を使って叔母がだしを取っていたので、今夜はごちそうだと思わず頬が緩んだ。

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