第54話 一行怪談54

 私のツイートのリプ欄には必ず、「それで、いつこっちに来るの?」と死んだ彼女アカウントからのリプがある。


「あの日を思い出さない?」と舐めかしく笑う幼い娘の顔は、かつて山の中に埋めた愛人にそっくりだった。


 野良猫に手を引っ掻かれてからというもの、虫や小動物を見ると涎が止まらない。


 壁にできたヒビに顔を近付けると、はぁと生温かい息が頬に当たった。


 ベランダから下の道路を眺めると、どこからともなく集まってきた大勢の人たちがにこにこと笑いながら私を見上げているが、友人が死んだ日からは「なぜだ」「あいつはいらない」と絶叫するようになった。


 ケタケタという笑い声が彼氏のお腹から響いたんです、だから彼のお腹を割いてその主を取り出そうと思ったんです、私は悪くないんです。


 巷で流行りの曲が、私にはどうしてもけたたましく笑う女の声と赤ん坊の泣き声、男の怒鳴り声が混ざったものにしか聞こえない。


 釣りに出かけた私は沢山の魚を釣り上げて意気揚々と家に帰ると、家人から「これ全部、人の手足だよ」と青ざめた顔で言われたのだが、どう見ても大小さまざまな魚にしか見えないので、おかしいのは私か、家人なのか。


 医者の言いつけを破ってこっそり酒を飲んだ晩、夢の中で「あともう少しだったのに」と恨めしげに私を睨む医者が出てきたかと思うと、目が覚めた翌日、私の家のベランダから首を吊った医者を見つけた。


 大叔母は今年で御年119歳を迎えるが、いまだに愛らしい赤子の姿で今日もニコニコと微笑んでいる。

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