第51話 一行怪談51

 頭がひしゃげた少女を家に連れて来られ、「娘さんが帰ってきてよかったね」と皆に笑顔で言われるも、そもそも行方不明になったのは息子だと言い出せない。


 家の外から猫の鳴く声が聞こえてくるのだが、庭や塀の隙間などをくまなく探しても猫の姿どころか声の発生源まで分からず、もう3年が経過している。


 家族の集合写真の顔の部分がいつの間にか真っ黒に塗りつぶされており、その写真の中の誰かが死ぬたび真っ黒な部分は消えているのだが、ある日写真を見ると全員の顔が綺麗な笑顔に戻っていた。


 家の隣に空き家があるのだが毎晩若者たちが騒ぐ声がうるさく寝付けないでいたので困っていると友人に相談すると、「お前の家の隣は普通の民家だろ」と困惑した顔で言われたので戸惑いつつ確認しに家の隣を見ると、綺麗な民家の庭で若い夫婦と小さな子どもが楽しそうに遊んでいた。


 子どもの騒ぐ声に嫌気がさして押し入れに閉じ込めてしばらく経った後、声が聞こえなくなったので心配して押し入れを開けたら子どもは冷たくなっており、子どもの亡骸を抱えて泣きじゃくる私を抱きしめた夫が「俺たちに子どもはいない!」と叫んでいる。


 くすくす笑う声が聞こえたのでベッドに目を向けると布団が大きく膨らんでおり、イタズラ好きの恋人の仕業だと思って布団に抱きついた時、「ただいまー」と元気な恋人の声が玄関から聞こえた。


 音楽が途中でぷつぷつと途切れるため、そろそろイヤホンも替え時かと手元を見ると、イヤホンはスマホにつながっていないと気づいた時、先ほどまで聞いていた音楽が大音量で流れ出した。


 カーペットがほつれていたので新しいものを買わないと、と考えながらカーペットに触った時、質感が髪の毛に似ていることに気づく。


 飼い始めたインコが話す言葉なのだが、「入れて」「入りたい」「入れたよ」を繰り返すようになってから、家が軋むようになった。


 ホラーゲームのキャラクターにいじめっ子の名前をつけてからというもの、キャラクターが死ぬたびにいじめっ子が怪我を負う事故に巻き込まれ、日に日にその怪我は深刻なものになっているのでわくわくしている。

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