第49話 一行怪談49

 雨が降る中町を歩いていると、雨粒が当たった物や人が少しずつ削られていることに気づき、早く帰ろうと早足になるも家にたどり着けるだろうか。


 抜けた私の髪が地面に落ちると、うねうねと動いて芋虫のようにゴミ箱の中に入っていったのを見て、家に髪の毛が落ちていない理由を悟った。


 近所で人気の定食屋の出汁の味が変わったので店主に理由を尋ねると、「女房の骨を使い過ぎたんで、代わりに女房と同い年の女の骨を使っているんです」と申し訳なさそうに答えた。


 ピーナッツを食べる友人をなんとなく眺めていると、友人の前歯がだんだん伸びていっていることに気づいたが、どこまで伸びるか楽しみなので様子を見ることにした。


「お腹がすいた」と騒ぐ娘に適当に菓子を渡して放っておいていると、あまりに娘が大人しいので娘の様子を見たら、娘は手に持っているゴキブリの頭をちぎり恍惚とした表情でその頭を貪っていた。


 伯父の遺影は泣き止まない息子に変顔を見せて笑わせてくれるため、本当に助かっている。


 子どもの笑い声がベッドの下から聞こえるためおそるおそる覗いてみると、半透明の子どもが恥ずかしそうに消えてしまったので、それ以来ベッドの下に菓子をいくつか置いて子どもが来ないか待っている。


 ある日を境に彼氏の体がだんだんと透けていき最終的に臓器が丸見えになってしまったが、臓器の状態が正常かが分かるようになったため彼氏の健康管理にちょうどいい。


 ぐるぐると回る扇風機の羽に必死にしがみついている5㎝ほどの大きさの子どもたちがあまりにも楽しそうなので、なかなか扇風機を止められない。


 トーストを焼こうとするといつも壁から生えた手が勝手に焼き加減を調整して美味しいトーストを焼いてくれているので、今度は美味しいコーヒーを淹れるようになってくれないか交渉したい。

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