第48話 一行怪談48
タマネギを刻んでいると目から何かが流れたため指で拭うと、緑色のどろりとした液体が指についたので慌てて鏡を見ると、鏡の中の私は紫色の涙を流していた。
足の指に水ぶくれができたので絆創膏を貼ろうとしたら、水ぶくれの真ん中にある黒い点がぎょろりとこちらを向いた。
愛用しているリップクリームが嫌なにおいに変わったため泣く泣く捨てたが、このにおいだったのかと腐敗した友人の遺体を横目にぼんやり考える。
救急車のサイレンが一週間前から家中で鳴り響きその音は日に日に大きくなっているがある日を境に音がピタリと止んでほっとした瞬間、床が地面ごと抜け落ちた。
床の汚れをティッシュで拭き取ると、「僕も」というか細い声がして壁に黒いシミが浮き出た。
絶景で有名な滝に足を運び、滝壺へ次々と身を投げる半透明の人々に拍手を送ったのだが、嫌がっていた半透明じゃない人が半透明の人々と一緒に滝壺へ落ちた時の姿が一番面白かった。
家のウォーターサーバーには「冷水」「温水」「ぬるま湯」「泥水」「酒ににおいがする何か」が選べるが、よく使うのは「ぬるま湯」だ。
にきびを潰すたびに、薔薇の香りがする。
足に噛みついている生首は、トレーニングにぴったりの重さなのでお一ついかが?
高笑いする癖がある兄だが、兄が口を大きく開くたび、兄の口の中にかつての故郷の町並みが見えて兄の口の中に入りたくなる。
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