第40話 一行怪談40

「弟のトラウマを克服させるためなんだ」と笑う友人はいつも、血糊で真っ赤に染まった人形の首を持ち歩いている。


 叔父が愛用していた双眼鏡越しに天井を見ると、天井の隙間から見える誰かと目が合った。


 洗濯物を干した後の物干し竿を触ると、いつも人間の体液らしい液体で濡れている。


 座布団から「痩せろ、重い」と声が聞こえて腹が立ったので座布団に火を点けると、その火が部屋に燃え移ってアパートを燃やしてしまったのだから、私に文句を言った座布団が全て悪いのです。


 炬燵に足を入れてうとうとしているといきなり冷たい手に足を掴まれて慌てて炬燵をめくると、何本もの手が炬燵の天板からぶら下がっていた。


「神様なんていない」と鼻で笑っていた友人が、「神様は本当にいたんだ」と鏡を怯えるようになった。


 腹部を刺されて地面に倒れる夢から覚めると、腹部を刺されて地面に倒れる夢から覚めると、腹部を刺されて地面に倒れる夢から覚めると、腹部を刺されて地面に倒れる夢から覚めると……。


「これがないとあの人が怒るのよ」とガタガタ震える姉の両手の爪は剥がされており、姉の手には鉈が握られている。


 嫌がる娘に野菜を無理やり食べさせた次の日から、私が食べようとする野菜はウジ虫がびっしりとついている。


 妻の指輪が黒くくすんでいき、指輪が真っ黒になった次の日、私は死んだ。

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