第41話 一行怪談41

 先端が黒いマッチを擦ると、真っ黒な炎が叔父の死に顔そっくりになった。


 爆竹の音が聞こえたので慌てて窓から外を覗くと、裸の男の腕が破裂する音だった。


 パソコンの画面がフリーズしたので戸惑っていると、真っ暗な画面に「ごめんなさい」という文字が浮かび、直後に実家の犬が死んだという連絡がきた。


 尾が三つに分かれた猫が、喉を食い破られた友人の上でにゃあと鳴く。


 小物入れにしていたクッキーの空き缶の中に見覚えのないマニキュアが入っており、よく見るとマニキュアは先日自殺した同僚のもので、それに気づいた時に耳元で「あなたで三人目」という同僚の声が聞こえた。


 桜の木の下に死体はないが、桜の木の根元が脈打っているところは見た。


 祖父からもらった万年筆はいくら使ってもインクが切れないが、なぜか庭に咲いている草花が次々と枯れていく。


 パスポートの私の写真がだんだんと子供の姿に戻っていくと同時に、家族の精神が退行していく。


 兄の背中にある蛇のタトゥーは、時々兄の声で「お前が欲しい」と私に話しかける。


 姉が愛用しているウィッグに白髪が混じるようになり、それと比例するように従妹の髪が黒々と変わっていく。

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