第19話 一行怪談19
泣き虫の弟を泣き止ませるには、母が手首を切ってそこから流れる血を舐めさせないといけない。
父の白髪を一本抜くと、奇声を上げた父の体が途端にしぼみだした。
カレンダーをめくってもめくっても、八月以降は真っ黒に塗りつぶされている。
イタズラで池の鯉を釣って食べたその日から、道行く人の顔が様々な魚の顔に見える。
時計の針が3時15分21秒から進まないが、祖父がその時刻に死んでから再び動き始めたのだが、今度は5時43分17秒で針が止まっている。
怒りっぽい友人が隣人が立てた物音で腹を立て文句を言いに隣の家に出かけたのだが、青い顔をして帰って来て以降、些細なことで涙を流しながら大声を上げて笑うようになった。
真夏の最中、溶けない雪だるまが家の前に現れた人はご用心。
猫の尻尾が見えたので家の中に迷い込んだかと近付くと、猫の下半身が壁から生えていた。
兄の声が部屋の扉の向こうから聞こえるが、私の隣では兄がぐっすりと眠っている。
通り魔に襲われて殺された姉が先日夢に出て「運命の人と出会った」と嬉しそうに話した翌朝、同じ通り魔に襲われて意識不明だった男が亡くなったというニュースが流れた。
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