一行怪談まとめ
ゆきまる書房
第1話 一行怪談
兄の頭の上にはしおれた百合が咲いているが、それを摘み取ってよいものかどうか。
「目薬を差すのが大変で」と、腕にある巨大な目玉に目薬を差しながら妻が言う。
今日も母宛てに届く郵便物には、胎児が入っている。
義両親はとても親切なのだが、二人の後ろをついて回る頭がひしゃげた女が気味悪いので好きになれない。
「この先二足で歩くべからず」と書かれた看板の先では、片足がない大勢の人間がみな笑顔でこちらを手招きしている。
「迎えに来たよ」と言う血まみれの包丁を持った中年女性に、私は一切見覚えがない。
目が覚めたら、そこは取り壊したはずの実家の居間だった。
先ほどから一心不乱に肉を食らい続ける彼に、「あなたの内臓はズタズタに切り裂かれてるよ」と告げるべきか。
私の影には必ず、鉈を持った老婆の影が後をついてきている。
「明日はあなたの命日です」と今日も家の前の烏が告げるが、それは約1か月続いている。
居間でテレビを見ながらくつろぐ父に、1週間前に彼の葬儀をあげたことを告げようと思う。
ダニやホコリ以外に小さな人食い人種を吸い込んでいることを知る人は少ない。
深夜2時に合わせ鏡をしても、家族や友人の死に顔が映るばかりで私の顔は一切映らない。
「助けて、助けて」という小さな声が、私の目の奥から響いている。
姉を見るたびに彼女の肩に座った小さな少女が睨んでくるのは、一体どういうことなのか。
ウズラの卵を割ると、小さな指の骨が出てきた。
猫を極端に嫌う友人の死因は、猫の脳髄を胃袋が破裂するほど食べたことによる窒息死であった。
日頃から自分を宇宙人だと言って周りを困らせる弟の血は、驚くほど鮮やかなオレンジ色だ。
祖父の自作の詩集の作品の中に、叔母の遺書の文言が紛れている。
祖母の目に映る私の顔は、明らかに見知らぬ他人の顔だ。
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