覚悟を決めて・・・

数日ぶりに家へと帰る。

大きな商談が纏まり、時間に余裕が出来たから。

また近々別の商談がある予定なので、それまでの空いた時間は娘と一緒に過ごす事にしよう。


「そう言えば光璃、無逃さんを連れ戻すなんて言っていたけど・・・どうなったのかしら?」


ちょくちょく家に居るメイドから、娘の様子を聞いてはいたが、ここ最近は全く音沙汰無し・・・。

きっと娘に口止めでもされているのではないか・・・、なんて考えると、今度メイド達には日頃からの感謝も兼ねて、休暇でも与えようかしら。

家に着くなり娘の部屋へ。

ノックをして呼んでみるが返事は無い・・・部屋には居ないみたい。


「あっ。ねぇ、光璃は何処にいるのかしら。」


近くを通りかかったメイドにそう聞いてみた。

しかし、そのメイドの様子が明らかにおかしい。

娘の名前を出した途端に狼狽えし、喋りも覚束ない様子だった。


「・・・娘に口止めでもされているの?それなら私から言っておくから、心配いらないわ。それで、娘は何処?」


心配はいらないとメイドに言って聞かせる。

そうすると、メイドは俯きがちになって話してくれた・・・。


「・・・その、実は、お嬢様は今・・・無逃さんと一緒で・・・」

「無逃さん?・・・まさかあの子、本当に無逃さんを連れ戻して・・・?」


あの日言った通り、探し出して連れ戻したというのか。

それだけでも驚きなのに、メイドは更に・・・信じられない事を言いだした・・・。


「っ!!申し訳ありません奥様!!本当の事をお話すると、今お二人は神之超家の私有地にある家に居るんです!!」

「・・・?何故それで謝るの?二人でそこに居るだけなんでしょう?」

「お嬢様が無逃さんをそこに・・・・・・監禁してるんです!!」

「・・・・・・なん・・・ですって・・・?」


耳を疑った・・・。

監禁?

娘が?

無逃さんを?


「お嬢様に言われて、無逃さんを連れて行ったのは私達なんです!!お嬢様に黙ってるように言われました・・・申し訳ありません!!」


目の前のメイドはビクビクと怯えている。

私に伝えなかった事で怒られると思ってか、それとも今話した内容の事でか・・・。

けれど今は・・・。


「すぐにそこへ向かうわ!車を出してちょうだい!!」

「は、はい!!」


言いたい事も聞きたい事も山ほどあったが、二人の元へ急がないと。

娘と、無逃さんを助けにいかないと・・・。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「お、お母様・・・どうして・・・」

「メイドから聞いたわ。光璃、もうこんな事は止めなさい。」


奥様にそう言われた少女は、メイドさんを睨みつける。

やはり口止めでもされていたのだろう・・・、睨まれたメイドさんは目を反らし、後退る・・・。


「邪魔しないでお母様!繋は私のなのよ!?だから連れ戻したの!それの何処がいけないって言うの!?」

「光璃・・・、もう無逃さんは貴女の執事でも何でもないのよ?彼は辞めたの・・・、分かるでしょう?」

「違う違う違う!!繋は私の!!私のなんだから!!!」


まるで・・・いや、見た通り、子が親に駄々をこねていた・・・。

少女を見ると涙が溢れそうなのをぐっと堪えていた。

そんな少女を見て、今更ながらに気づいた。

事の発端は俺にある・・・・・・俺が、ハッキリと言ってやらないといけないんじゃないか・・・。

もうこれ以上、少女にも、奥様にも、メイドさん達にも、皆にも迷惑を掛けるわけにはいかない・・・。

少女が悲しむのを恐れて、自分が痛い思いをするのを恐れて、何も言えずにいたけど・・・俺からちゃんと、決別しなければいけない。


「・・・お嬢様・・・」


覚悟を決め、今にも泣きそうな少女に声を掛ける。

これで終わらせるために・・・。

・・・・・・けれど、やっぱり神様って方は俺に何度も試練を与えたいらしい・・・。

招かれざる人物がもう一人・・・・・・ドアの前に立っていた。


「ハッキリ言ってあげないとダメだよ・・・・・・繋さん❤」

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