諦めて・・・

腹部から走った強烈な痛みが全身を駆け巡る。

手足が硬直し、脳が危険信号を発している・・・。

息ができない・・・。

言葉に鳴らない声を上げ、数秒後、ようやく空気が肺一杯に入ってきた。

過呼吸にでもなったかのように、必死に空気を吸う・・・。

腹部から走った痛みはまだ引かない・・・。


「かはっ!?・・・はぁ、はぁ、・・・ううぐっ・・・」


天井を見上げる俺の耳に、またバチバチという音が聞こえた。

チカチカとする目で下を向けば、一切の表情が消えた少女が俺を見つめていた。


「痛い、繋?痛いでしょう。・・・私に嘘なんか吐くからよ!!」


怒鳴り声をまき散らし、見開いた目で俺の顔の近くまで寄ってくる少女。

怖い・・・。

今の俺にはそれしか考えられなかった・・・。


「すみ、ません・・・許してくだ、さい・・・」

「許して欲しいなら、行動で示しなさい。・・・キスしましょう、繋。」


俺の言葉も聞かないまま、少女は強引にキスをしてきた・・・。

唇同士をくっつけるだけのキス。

嫌で嫌で仕方なかった・・・けれど、またあんな痛い思いをするよりかはマシだった・・・。

我慢すればいい・・・俺が耐えるしかない・・・。

少女は一心になって、何度も何度もキスをしてくる。

そんな中でも、俺の目は、少女の手にある凶器にしか向けられていなかった。

あれを奪えれば・・・いや、奪った所でどうする。

俺は鎖で繋がれていて逃げ出す事もできないんだ。

奪えたとしてもその行動がまた少女の逆鱗に触れて、もっと痛い目にあわされるのが落ちだ・・・。

・・・この鎖さえ無ければ・・・。


「・・・はぁ、はぁ❤繋・・・❤」


気が済んだのか、唇を離す少女。

もうこれで終わりにして欲しいと願う・・・。

・・・だが、俺はとことん運から見放されているようだ・・・。


「・・・繋、私もっと繋を感じたい。・・・ねぇ、繋もそうよね?」


言い終えるなり服を脱ごうとする少女。

まだ痛む腹部を抑えながら、少女の手を取る。


「な、何を、してるんですか・・・!?」

「決まってるでしょ。もっと一緒になれて・・・・・・気持ちの良い事❤」


血の気が引いた。

俺の手を振り解いた少女・・・。

それでもまた手を取る俺・・・。

そんな行動に気を悪くしないわけも無く・・・。


「何をしているの繋!?手を離しなさい!」

「お願いします!それだけは、やめて下さい!」

「離しなさいと言っているのよ!?」


電気の放つ音がした。

それだけで、俺の動きは止まってしまう。

少女が手に持つそれで、俺を脅してくる。


「また痛い思いをしたいの!?大人良くしなさい!!」


手を下げて、無抵抗になるしかなかった・・・。

その間にも、服を脱ぎ捨てていく少女。

残ったのは、下着だけになった。


「私だって繋に痛い思いはして欲しくないのよ?・・・だから、大人しくしていればいいの。分かるでしょ、繋。」


今度は俺の服を脱がしにかかる少女。


「大丈夫よ繋、私はもう子供じゃ無いのよ。どうすれば良いかぐらい知ってるわ。繋も絶対気持ちよくなれるから・・・ね❤」


金眼が俺を捕らえて離さない・・・。

・・・何で、こんな事になるんだろうか。

ただ普通に生きて来ただけだったのに・・・。

あの時、すぐにあの場を立ち去っていれば良かった・・・。

そうすれば、執事にならずに済んだのに・・・。

この少女にも、深弥お嬢様にも・・・・・・出会わずに済んだのに・・・。

あの時ああしていればと・・・この時こうしていればと・・・そんな事を考えている間に、上半身は脱がされていた・・・。


「繋、大好きよ❤幸せになりましょうね❤」


何も見たくなかった・・・この現実を目にしたくなかった・・・これからされる事を考えたくなかった・・・だから・・・。

俺はそっと、目を閉じた・・・・・・。


「光璃!!無逃さん!!」


ドアの方から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

閉じた目を開き、ドアの方を見ると・・・居るはずの無い人物。


「・・・・・・奥、様。」


少女の母・・・神之超瑠輝様がそこに居た。

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