拉致監禁されて・・・

金眼を輝かせながら部屋に入ってきた少女。

お風呂にでも入ったのだろうか、いい香りが部屋の中に充満していく。

ようやく痺れが治まってきた俺は、少女が此方に向かって歩いて来るのを横目に起き上がろうとした・・・。

ガシャンッ!!


「んぐっ・・・!?」


金属音と共にまたベッドに引き戻される。

首には絞めつけられたような痛みが走った。

息苦しさにむせ、恐る恐る首元に触れた。


「・・・これ・・・」


首にチョーカーは着けられていた。

・・・だが、このチョーカーは深弥お嬢様が着けた物じゃない。

感触で分かった・・・・・・これはこの少女に着けられた物・・・。

初めて神之超家で少女に出会った、その日に着けられた・・・黒いチョーカー・・・。

まるでこの執事は自分のモノだと、主張するかのように刺繍された少女の名前・・・。

その黒いチョーカーに鎖が取り付けられていて、鎖の反対側はベッドの見えない下まで伸びていた・・・。


「ダメよ急に起き上がっちゃ。首、痛めるわよ?」


少女が俺の寝ているベッドに腰掛けた。

真っ直ぐに俺だけを見つめ、全く目を反らさない。

金眼に吸い込まれてしまいそうで、俺から目を反らす。


「何で、こんな物が着けられているんですか・・・。」

「繋がもう二度と私から離れないようにする為に決まってるでしょ。」


理由を聞いても驚く事しかできなかった。

一体何を言っているんだ・・・この子は・・・。

拉致されたと思ったら、今度はまるで・・・監禁じゃないか・・・。

目を背けている俺に向かって、少女は喋り続けた。


「その為に全部用意したのよ?眠らせる薬だって二人で住む家だって、全部全部・・・・・・私と繋の為に用意したの。だからもう、私から離れさせない逃がさない渡さない。ここでずっと二人で生きていきましょう、繋。」


狂ってる・・・。

真っ先に思い浮かんだのはそんな言葉。

何故、ここまでする・・・。


「・・・どうして、ですか・・・」

「何が?」

「どうして、俺なんかに執着するんですか・・・。ただの執事だった俺に、何でそこまで・・・」


今まで疑問に思っていた事を、ようやく聞いた。

それに対して少女は、さも当たり前のようにこう答えた。


「好きだからよ。繋、私は貴方が好きよ。」

「え・・・」


二人目だった・・・。

自分に好意を寄せてくれる少女・・・。

お仕えしていた時は我儘を通り越した無茶ぶりばかりを命じていた少女が・・・俺を好き?

素直になれなかったとでも、言うつもりか・・・。

けど、だからって・・・。


「だからって・・・、ここまでしなくても・・・」

「ここまでして貴方が欲しいのよ。分かるでしょ?」

「けどこれは・・・、拉致、監禁ですよ・・・」


言いにくい事を口にする俺・・・。

まさか、5つ以上歳の離れた少女にこんな事をされるなんて思いもしなかった・・・。

いや、普通はそんな事はありえないんだ・・・・・・ただ、今のこの少女が狂っているだけ・・・。

それもまた、お仕えしていた時の様に無茶ぶりを言って、俺のせいにされるのだろうか・・・。

そう考えていたら、少女が俺に跨って、顔を覗き込んできた。


「拉致?監禁?・・・だから何?そうする事で繋が傍に居るならそうするわ。証拠何て神之超の力を使ってでも揉み消してやるわ。私と繋を邪魔する奴がいるなら、そいつらも消してやるわ。・・・・・・特に、あの銀髪は・・・。」


簡単に恐ろしい事を次々に口にする少女。

その少女の小さな両手が、俺の頬に添えられる。

ただそれだけの事なのに、得体の知れない恐怖を感じていた俺は、自分でも気づかない内にビクビクと震えていた・・・。

そして、こんな状況から早く抜け出したくて、考え無しに思った事を口にしてしまった・・・。


「や、やめて下さいこんな事!ここは一体何処ですか・・・此処から出して下さい!お願いします・・・!」

「ダメよ、言ったでしょ?此処が今日から私と繋の家なんだから。起きる時も食事を取る時もお風呂に入る時も寝る時も、此処で私と一緒なの・・・嬉しいでしょ❤・・・・・・あぁそうだわ、後は」


もう限界だった・・・。

こんな事をされている事も、そう言われた事も・・・。

なのに、俺の上に跨る少女は、俺を更に限界の先・・・・・・地獄へと突き落とすような事を言い放った。


「・・・赤ちゃんも、此処で・・・ね❤繋❤」


小さく悲鳴を上げた俺を見て、少女は恐ろしいほどの笑みを浮かべていた・・・・・・。

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