輝いて・・・
ゆっくりと慎重に暗い夜道を進んでいく。
いつ不審者が飛び出してきてもおかしくない・・・。
まだ、さっき見た影が「人」だと決めつけるのは早いが、用心するに越したことは無い。
「この角を曲がれば・・・」
壁に背中をピッタリとくっ付けて、そっと曲がり角の先を確認する。
街灯が赤いを灯しており、今歩いてきた道よりは明るいその場所には、人影は見当たらなかった。
一応、念の為に周りも確認しておく。
辺りを見渡してみるが、やはり誰も居ないようだった。
「ふぅ・・・。やっぱり見間違いだったのかな?寝ぼけてるのか俺・・・。」
何はともあれ、この場合は見間違いで良かった。
でも、本当に不審者が出た時の事を考えると不安になってくるので、一応明日メイドさん達やボディーガードさん達に話はしておくか・・・。
戻ろうと振り返った時、俺の目に・・・今度はハッキリと人影が飛び込んできた。
バクンっ!!と心臓が跳ねた・・・。
丁度、街灯の明かりが届いていない真っ暗な場所に立つ人影・・・。
生唾を飲み込んだ俺だったが、ある事に気づいた。
「・・・子供?」
背丈からしてその人影はまだ子供だった。
だがそれでもおかしい、こんな夜中に、こんな場所で一体何をやっているんだ・・・?
この子が不審者だとは思えない・・・声を掛けてみるしかなかった。
「ねぇ、そんな所で何をやっているの?こんな夜中に・・・・・・。もしかして迷子になった?」
顔の見えない相手に心配の声を掛ける。
が、相手から返答は無い。
仕方なく近づこうと思ったら、相手から俺の方へ近づいて来た。
小さな足音。
近づくにつれ、街灯の明かりに照らされて、段々と姿が見えてくる。
華奢な足に、高そうなフリルの付いた服を着ている。
そして、その手には・・・・・・白いチョーカー・・・。
「・・・・・・嘘、だろ。・・・何で・・・」
それしか口にできなかった。
だって、此処に居るはずのない人が・・・・・・少女が俺の目の前に立っていたから・・・。
街灯の明かりが霞む程に、雲の隙間から月明かりが射して・・・少女の金髪を輝かせていた・・・。
「やっぱり来てくれたわね、繋❤」
何故か背筋に寒気を覚えるほどの笑顔を浮かべた金髪の少女・・・・・・「神之超光璃」がそこに居た・・・。
「何を・・・やっているんですか・・・こんな所で・・・」
「待っていたのよ、自分の仕える主を間違える執事をね。」
・・・・・・ここまでするか?
何でそこまでして俺を連れ戻そうとする?
たった数ヶ月仕えただけだ・・・なのに何で・・・。
「さぁ、行くわよ繋。」
予想を超える行動に驚き、困惑するしかない俺にそう言ってきた少女。
何とか声を絞り出す・・・。
「何処に・・・」
「決まってるでしょ、私達の新しい家よ。・・・聞こえなかったの、早くしなさい。」
近づいてくる少女。
反射的に後ろに後退った瞬間・・・・・・何かにぶつかった。
驚いて振り向こうとしたら、後ろから羽交い絞めにされ、口と鼻に布の様なものを当てられた。
何か甘い匂いが鼻を突き抜けて来た。
ヤバい・・・、そう感じて振り解こうとしたら、今度は手足を抑えられ、身動きが取れなくなった・・・。
一人じゃない、複数人いる。
斜め上にあるミラーで俺の後ろに居る人物を確認すると、神之超の家のメイドさん達が、俺を押さえつけているのが見えた。
馬鹿だ俺は・・・こんな夜道を、一人で出歩く少女が居るわけが無い。
それも、あの、神之超の・・・。
「うっ・・・くっ・・!」
段々と意識が遠のいていく・・・。
体から力が抜けていき、その場に崩れ落ちる様に横たわる・・・。
頭の上から足音がする・・・。
霞んだ俺の視界に、赤い靴が映る・・・。
目だけを上に向けた・・・。
「おやすみ繋。次に起きた時は・・・・・・二人だけの世界よ❤」
月明かりも霞む程に、少女の金眼が輝いて、俺を見下ろしていた。
それを最後に、俺の意識は途切れた・・・・・・。
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