思いついて・・・

「どうしてあんな事を・・・、わざと怒らせるような事をしたんですか?」


深弥お嬢様の部屋に俺と二人。

聞きたかった事を聞いていく。


「それってどっち?キスした事?それともそれが初めてじゃ無いって事?」

「・・・どっちもです。」

「あはは!う~ん、キスしたのは分からせてあげるためで、教えてあげたのも・・・分からせてあげるため。」

「何を・・・ですか?」


椅子に座っていた深弥お嬢様が立ち上がり、俺の前に立つ。


「繋さんは私のだって事。」


真っ直ぐに俺を見つめる深弥お嬢様の瞳が、俺を捕らえて離さない。

身長差があり、見上げているのは俺のはずなのに・・・向こうから見上げられている感じがした。


「意味が分かりません。・・・俺は深弥お嬢様の執事です。それは皆分かっています・・・。」

「でも、あの子はそれが気に入らなかったみたいだよ?だから、教えてあげたの。・・・それに」


深弥お嬢様に手を取られ、そのままベッドの方まで引っ張られて・・・・・・ベッドに押し倒された。

ここで顔色を変えたり、動揺してはいけない。

また、深弥お嬢様の思う壺だ・・・。


「繋さんは私の執事である前に、私と将来を共にする大切な人。・・・そういう意味でも、分からせてあげたの。」


そんなの初耳だ・・・。

また俺にキスをしてこようとする深弥お嬢様。

まだ聞きたい事が残ってる・・・、だからそれを避けるために顔を反らした。

直後、顔を元の位置に戻されて抵抗も空しく唇を奪われた。

小さな舌が俺の口内に侵入してきて、好き勝手に弄り回す。

こんな少女にがここまでする事に、恐怖にも似たような感覚を覚えた。

息苦しくなってきたところで、深弥お嬢様の肩を押して離した。

むせる俺に対して、満足気な表情をして俺を見つめる深弥お嬢様。


「・・・このまま、これ以上の事も・・・。」

「っ!?」


その言葉にビクッと反応してしまう。

そんな事を言われて動揺するなと言われても無理だ。

ゆっくりともたれ掛かってくる深弥お嬢様。

口を開こうとしたら、


「・・・何てね。まだ先に取っておくね!」


そう言って深弥お嬢様が俺の上から退いた。

汗が一気に噴き出て来た。

心臓もバクバク言っている。

・・・本当に、心臓に悪い。

力が抜けきった俺に、背を向けた深弥お嬢様が振り向いて言った言葉に、また体が強張った・・・。


「ただし、私が我慢できればの話だけど・・・・・・ね❤」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


酷く部屋が荒れている。

ベッドシーツは破け、壁紙は剥がれ、机も壊れている・・・。

この部屋には私しか居ない・・・私がやった。

繋から引き離されて、家に連れ戻された。

あの場にいたメイドは全員クビにする様、お母様に言っておかなければいけない。

・・・そしてアイツは・・・。


「許さない許さない許さないっっ!!アイツだけは絶対にっっ!!」


近くにあった物を片っ端から投げまくる。

物も壁も何もかも壊れていく。

けど、一番壊したい物は壊れていない・・・。

アイツが・・・。


「繋、私の繋・・・。」


床に寝転がり、繋が身に着けていたチョーカーを抱きしめる。

もう匂いも薄れてきた。

それに何度もこれを使って自慰に耽っていたから、私の匂いがしみ込んでいるかも・・・。

これを・・・もう一度これを繋に・・・そうすれば繋は私の元に戻ってくる・・・。


「あああ繋!!私のっ!!繋っっ!!!」


叫びながら手足をバタつかせる。

まるで欲しい物を親にねだる子供の様に・・・。

ピタッと動きを止める。


「そうだ・・・そうだそうだ!!・・・良い事考えた!!」


立ち上がってニコッと笑う。

笑わずにいられない・・・だって、繋を取り戻す方法を考えたんだから。

繋は優しいから、私の事を放っとけ無いはずだ。

なら、それを利用すれば良い。

それだけの話・・・。


「待ってなさい繋❤今行くから❤」


繋が戻ってきた時の事を考えると、笑顔にしかなれなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る