金と銀がぶつかって・・・
かなり苛立った様子で私の前に立ち塞がる金髪。
朝から私に会った事がそんなに不愉快だったのか。
それは私も同じ。
「・・・何か用?」
先程までの幸せな気分を台無しにされて、あからさまに不機嫌な声で金髪に話す。
それを聞いた金髪は、歯をギリギリと鳴らし、吠えて威嚇する犬みたいに噛みついてきた。
「とぼけるんじゃないわよっ!!繋を、アンタが繋を連れて行ったんでしょっ!!」
「・・・・・・あ~あ、もうバレちゃったんだぁ。」
私の見ていた限り、知っていた限り、この金髪は繋さんにかなりご執心だった様子。
その繋さんが居なくなったとなれば、探し出すとは思っていたけど・・・昨日の今日でもう見つけるなんて。
可哀想な繋さん、こんな子に気に入られるなんて・・・。
「っ!!やっぱり・・・!!今すぐ連れてきなさいよっ!!繋は私のなのよっ!!大体何でアンタみたいなのが繋を連れて行くのよっ!!!」
「答える筋合いは無いわ。貴女には関係ない事よ。・・・私の繋さんに付きまとわないでくれる?」
「っっっ!!!」
わざとらしく「私の」を強調して言ってやった。
案の定、目の前の金髪は目を血走らせながら、私の胸倉を乱暴に掴んできた。
「調子に乗るんじゃないわよっっ!!!繋は私のだって言ってるでしょっ!!いつもはクール気取ってる癖に、生意気なのよっ!!・・・なっ!?」
掴んでいた手をバシッと払ってやったら、金髪は一瞬驚いた顔をしていたが、またすぐに怒りの形相に戻った。
「別に気取ってたわけじゃ無いわ、ただ興味が無かっただけ。・・・けど、それも変わった・・・、繋さんと会えたから。」
乱れた衣服を正しながら教えてやる・・・私には繋さんしか、繋さんには私しかありえないって事を。
「教えてくれた、笑顔も温かさも好きって気持ちも他にも沢山・・・全部、繋さんが私に教えてくれた。何に対しても興味が無かった私に「繋さん」っていう存在が必要になったの。・・・だから」
今も私を睨んでいる金髪に近づいて真正面から言ってやった。
「貴女なんかに絶対、私の繋さんは渡さない。」
「~~~っっ!!このっ!!」
飛び掛かって来た金髪に向けて、手を前に差し出した。
金髪の動きが一瞬遅くなったのを見て、言った。
「良いの、そんな事して?皆見てるよ?」
「!?」
私に言われて初めて気づいたのか、周りを見渡して驚いている金髪。
結構前からチラホラと此方を見ている生徒がいるのには気づいていた。
まぁ、怒りに我を忘れて見えていなかった子もいたみたいだけど・・・。
止めにもう一言付け加えてやる。
「それに、あの神之超さんが皆の見ている前で、更上神家の娘である私に手を出したりしているのがバレたら・・・どうなるのかな?」
「ぐぅっ!!!・・・アンタ、覚えてなさいっ!絶対に繋は返してもらうからっ!」
私にしか聞こえない程の声でそう言い残して、金髪は遠くで見ていたいつもの連れ二人と一緒に門を潜って行った。
あの金髪の前に繋さんをチラつかせたく無かったから、本当は一緒に送り迎えして欲しかったのを我慢に我慢を重ねていたのに・・・。
「バレちゃったんなら仕方ないよね。・・・・・・あっ、そうだ。」
とっても良い考えが頭に浮かんだ。
バレたのならそれを利用すれば良いだけの話。
繋さんは私のだって、目の前で分からせてやれば良い。
「あはは!楽しみ!」
次に繋さんを連れてくる時が、今から楽しみになって来た。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
更上神家で深弥お嬢様の帰りを待つ間、手持ち無沙汰なので神之超に居た時同様にメイドさん達のお手伝いをしていた。
・・・だが、メイドさん達の動きに無駄が無く、次から次にどんどん仕事が終わって行く。
返って邪魔になっているんじゃないかとまで思えてきた・・・。
そうこうしているうちに、深弥お嬢様が帰って来た。
「繋さん、ただいま❤」
「あぁっと!?お、お帰りなさいませ、深弥お嬢様。」
帰ってくるなり俺に抱き着いてくる深弥お嬢様。
周りに居たメイドさん達が口元を隠しながら此方を見ている。
絶対ニヤニヤしているのを隠しているな・・・。
そんな事にも気づいていない様子で、深弥お嬢様に部屋まで連れていかれた。
「ねぇ繋さん、やっぱり明日から私の送り迎えをお願いしても良い?」
「えっ?はい、構いませんけど・・・。」
「ありがとう!」
俺の膝の上でスリスリと擦り寄って来る深弥お嬢様。
でも何で急に?
「あの、深弥お嬢様。」
「何?繋さん。」
「何かあったんですか?」
「えっ?・・・何も無いよ?どうして?」
「あ~いえ、すみません変な事を聞いて。ただ気になっただけで・・・。」
気まぐれだろうか?
単に誰かと一緒に登下校してみたいと思っただけかもしれない。
深弥お嬢様だってまだ子供なんだ、そういう時もあるだろう。
「私の事気にしてくれてるんだ、繋さん❤」
「えぇ、いや、それは深弥お嬢様の執事ですから。」
「あはは❤ありがとう❤」
抱き着いて俺の胸に顔を押し付ける深弥お嬢様。
だからだろうか・・・、何を言ったのか何て聞こえなかった。
「何も無かったよ・・・・・・今はね・・・。」
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