色々バレて・・・

ギュッと何かにしがみつかれて目が覚めた。

横を見ると、天使の様な寝顔をしている深弥お嬢様が・・・。

何故俺と同じベッドで深弥お嬢様が眠っているのか?

そもそもここは深弥お嬢様の部屋で、このベッドも深弥お嬢様のベッド。

つまり、正しくは俺が深弥お嬢様のベッドで眠っている事になる。


「・・・寝起きだからか冷静だな、俺・・・。」


普通ならベッドから落っこちるくらいの反応はしてもいいだろう。

目が覚めて横を見ればお仕えしているお嬢様が居るんだから。

でも、事前に居る事が分かっているのなら話は別だ。

昨日、今まさに俺の隣で寝息をたてている更上神家のお嬢様に、半強制的に自分の執事になるように迫られた。

結果、深弥お嬢様の執事として、この家に住まわせてもらう事になった。

そこまではまだ良い・・・問題は、その後だ。


「・・・まさか、一緒に眠るなんて言い出すとは思わなかった・・・。」


あらかた家の中を案内してもらい、家に居るメイドさんやボディーガードさん達に挨拶をして、それから食事なども済ませる頃にはすっかり遅い時間になっていた。

翌日も学校だ。

深弥お嬢様は昨日は欠席したのだから明日は行くはず、俺も自分の部屋で早く眠て、明日に備えよう・・・そう思っていた矢先。


「さぁ眠ましょう、繋さん❤」


深弥お嬢様に手を引かれて行ったのは、深弥お嬢様の自室。

瞬時に理解し、勿論断った・・・・・・しかし。


「ダメですよ繋さん!一般的に執事が居る家では、一緒に眠るのが当たり前なんですよ!」


なんて言われた・・・。

執事が居るのに一般家庭と言うのだろうか?

でも光璃お嬢様はそんな事しなかったし・・・。

もしかして家によっても違うのか?

いやでも・・・。

色々考えている内に部屋へ入れられて、こうなった。

正直、眠りにつくまで時間が掛かった。

隣に居る深弥お嬢様が離れまいとしがみついてくるものだから、匂いとか柔らかさだとかが伝わって中々眠れなかった・・・。

これ・・・、ずっとなのかな?

初日から問題発生。

・・・まぁ今に始まった事では無い。


「さて、と。」


お嬢様を起こして、学校に行く準備をしないと。

その前に渡された執事服に着替えるために、自室へと行かなければ。

ベッドから抜け出そうと、しがみついている深弥お嬢様の手の中から自分の腕を引き抜こうとした瞬間・・・、


「何処に行くの?」


強い力で深弥お嬢様が俺の腕を締め付けてきた。


「み、深弥お嬢様、起こしてしまいましたか。」

「ううん。それより、何処に行こうとしてるの?」


ギリギリと腕が締め付けられる。


「自室に、執事服に着替えに・・・。」

「そっか!繋さん、昨日はそのままの恰好だったね!」


理由を話すと、するりと腕を離してくれた。

一瞬、昨日も感じた寒気がしたような気がした。


「じゃあ早く戻って来てね!・・・あんまり遅いと、心配になっちゃうから。」

「分かり、ました・・・。」


部屋を出て、自室へと向かう。

締め付けられた腕を、袖を捲って見ると、赤く手形の跡が残っていた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


執事服に着替え、身だしなみを整えてから、深弥お嬢様の部屋へと戻る。

因みに予想はしていたが、執事服の色も白だった。

部屋へ戻ると、深弥お嬢様はすでに着替えていて、いつでも出かけられる準備が出来ていた。

髪もいつものツインテールに結われている。


「あの、深弥お嬢様?お着替えや髪を結うのは、執事の仕事じゃ・・・。」

「え?私はいつも自分でやってたけど・・・・・・もしかして、あの子には繋さんがやってたの?」

「それ、は・・・」

「そんな所に立ってないで、ここに座って、繋さん。」


自分の座っているソファーのすぐ隣を指さす。

昨日も同じことをした気がする・・・。

言われた通り、隣に座ると、間髪入れずに深弥お嬢様が俺の膝に乗りかかってきた。

肩を掴まれて、目を見て聞いてくる。


「ねぇ?したんでしょ?あの子には。」

「あの、えっと・・・、しまし、た。」

「へぇ~~、そっかぁ~~・・・。なら明日からは私もしてもらおう。良いよね?繋さん。」

「・・・・・・はい。」

「あはは❤楽しみだなぁ❤」


そのまま抱き着いてくる深弥お嬢様。

もう一つ、聞いてみた。


「あの、お風呂や朝食は?」

「私は帰って来てからお風呂に入るよ。朝食は食べてから行く。」


抱き着いたまま答える深弥お嬢様。

そして続けて言った。


「前までは朝にお風呂に入ってたけど、帰る頃には汚れちゃってたから。」

「っ!!そう、ですか・・・。」


何の事か聞かなくても分かる、「あの事」だと。

思い出すと、申し訳ない気持ちが込み上げてくる。

それを吹き飛ばす様に、深弥お嬢様が言う。


「でももう大丈夫。繋さんが助けてくれたから・・・それに、自分でもなんとか出来るから。」

「・・・はい、深弥お嬢様。」


笑顔を交わす。

と思ったら、急に真顔になった深弥お嬢様が聞いてきた。


「繋さん?そんな事を聞いてくるって事は・・・・・・あの子とお風呂も一緒になんて・・・ないよね?」

「へぇっ!?いや、それはあの・・・」

「繋さん。」

「はいっ!?」


手で顔を挟まれた。

そして、また笑顔に戻った深弥お嬢様が言った。


「私も、ね❤」

「・・・・・・はい。」


顔は笑顔だったけど、怒っているようにも見えた・・・。

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