答えるしかなくて・・・

興味が無かった。

何に対しても、誰に対しても、何をやっても、夢中になれなかった。

きっとそれは、私が心から興味を持っていないからだと思った。

話しかけてくるクラスの子にも、目に見えたお世辞を言う教師にも、両親の仕事相手にも、適当に返せば皆それで喜んでいた。

ただ一人は、そんな私が気に食わなかったみたいだけど。

いつからだったか、金髪の子から嫌がらせを受けるようになった。

誰も通らない様な校舎裏に連れていかれて、服を引っ張られたり、髪をグシャグシャにされたりした。

クールぶってるとか、私と並び立っているなんてだとか、どうでもいいような事ばかり口にしていた。

もう二人居たけど、その子達は何もせずただその光景を見ているだけだった。

きっと嫌々連れて来られたんだろう。

金髪の子は気が済んだらその二人を連れて帰って行った。

私も身なりをある程度整えたら、すぐに帰った。

別に誰かに相談しようとか、やり返そうだなんて思わなかった。

そんな事をする金髪のあの子にも、そして自分にも興味が無かったから。

ある朝、いつも通りに登校したら、門の前であの金髪の子が誰かにくっ付いていた。

執事服を着ていたから、金髪の子の執事だと分かった。

自分でも分からなかったけど、何故かその光景をジッと見ていたら・・・、その人と目が合った。

向こうも私をジッと見ていたけど、金髪の子に呼ばれて目を反らした。

私はハッとして、そのまま門を潜って行った。

それから毎日、あの人は私に「いってらっしゃい」と言ってくれた。

何でそんな事をするのか分からなかったけど、不思議と嫌じゃなかった。

あの人の名前は繋さんって言うらしい・・・、あの金髪の子が聞いてもいないのに色んな子に話していた。

何でもあの金髪の子の言う事を聞いてくれる専属の執事らしい・・・可哀そうに・・・。

ある日の放課後、いつもみたいに校舎裏に連れられて嫌がらせを受けていた。

ふと、あの人の事が頭を過った。

何でこんな子に仕えているのだろう?

嫌にならないのか?

逃げ出したくないのだろうか?

・・・私なら、この子とは違うのに・・・。

気が付いた時には、私は目の前の金髪を睨んでいた。

初めてそんな事をしたから、自分でも驚いた。

それは相手も同じだったようで、一瞬動きが止まったが、私の態度に更に気を悪くしたようで、いつもより長く嫌がらせを受けた。

同時にもう一つ気づいた。

私・・・どうしてこんなにあの人の事を考えているんだろう・・・。

目の前で手を振り上げられているのにも気が付いていなかった。

そして・・・。

バチンッッ!!!

そんな音が耳に入って顔を上げたら・・・・・・繋さんがそこに居た。

私を守るように背を向けている彼を見て、今まで何に対しても興味を持てなかった私が初めて・・・・・・「恋」をした。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「・・・へっ?今、何て・・・」


頬を赤らめる少女に聞き返す。

聞き間違いではないか・・・いや、そうであってほしい。

俺とこの子では歳が離れすぎているし、何より釣り合いが取れない。

そもそも、俺・・・下手しなくても捕まる・・・。

俺が聞き返したのが不満だったのか、ムッとした顔で俺に距離を寄せる少女。


「絶対聞こえてたでしょ!好きって言ったの!好き好き好き!!」

「わ、分かりましたから!ずみません俺が悪かったです!」


近距離で好きを連呼してくる少女に謝る。

すると、更に距離を近づけてきて・・・。


「ねぇ、だから私の執事になって。ずっと私の傍に居てよ・・・。」


少女の顔がどんどん俺の顔に近づいてくる。


「あ、あのちょっと!?」

「なってくれるよね?ね?」


言いながらも近づいてくる。

立ち上がろうとした時、少女が俺に飛びついてきた。

そのまま馬乗りになられて、ソファーに押し倒された。

銀髪が俺の顔に掛かっている。


「逃げちゃダメ。答えて、私の執事になって・・・ね?」


後数センチで、唇が・・・。


「な、なります!なりますから!!」


顔を背けて答えた・・・答えてしまった。

俺の答えに満面の笑みを浮かべる少女。

反面、やっちまったと項垂れる俺。

流石にお嬢様もここまでの事はしなかったから、耐性が無い・・・。


「繋さん❤私の繋さん❤」

「うわっ!?」


項垂れる俺に抱き着いてくる少女。

こんなところ誰かに見られたらマズい。

そう思って離れようそしたら、耳元で呟かれた・・・。


「私の事、何て呼ぶか・・・分かってるよね?」


耳に息が掛かってくすぐったい。

早く離れてもらうためにも、俺は答えた。


「・・・・・・深弥お嬢様。」

「うん❤」


より一層、強く抱きしめられた。

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