着替えをさせられて・・・
朝、知らない部屋で目が覚める。
ガバッ、と勢いよくベッドの上で跳ね起きる。
部屋の中を見回して、昨日の事を思い出した。
「そうだった、俺、昨日からここで執事をする事になったんだ・・・。」
お仕えする事になった我儘なお嬢様によって、住んでいたアパートを解約されて、この家に住み込みになったんだった。
一応、アパートに住んでいた時の生活品や消耗品などは全て昨日の内に運んできてもらう・・・はずだった。
業者さんに家の前まで荷物を運んでもらったら、それを見たお嬢様言った。
「それは全て処分して頂戴。必要なものは全部こっちで揃えるわ。いいわよね繋?」
「・・・・・・はい。」
昨日の事で身に染みている。
俺は頭を縦に振る事しか出来なかった。
そして泣く泣く、長年愛用していた物達はメイドさん達の手によって処分された・・・。
さようなら、俺の生活を支えてきてくれた物達よ・・・。
それから枕を涙で濡らす・・・事は無かったが、ややテンション低めに就寝した。
「それからすぐに戻ってきたメイドさん達が、この部屋に色々設置してくれてたな。」
必要最低限の物は部屋にある。
何なら洗面台まであったりする。
ベッドから降りてその洗面台まで行き、顔を洗い歯を磨き寝癖をなくす。
次にタンスを開ける。
中には同じ執事服が数着。
掛けてあった執事服の一着を手にすると、横にある姿見の前に立ち着替えていく。
因みに首のチョーカーは外してはいけないらしい。
お風呂に入る時に濡れてしまうんじゃないかと聞いてみたが、防水らしいので大丈夫との事だった。
それからものの数分で、俺は執事服に身を包んだ。
「さて、と。あんまり遅いとまたお嬢様に何されるか分かったもんじゃないからな。」
すぐに部屋を出てお嬢様の部屋まで向かう。
今日は平日なので、お嬢様は学校のはずだ。
もう起きて準備を済ませているかもしれない。
「お嬢様が学校に行った後は、この家の間取りを覚えておこうかな。」
取り合えず、昨日はお嬢様の部屋の場所だけは覚えた。
もう挟まれるのはごめんだ・・・。
そのお嬢様の部屋の前に着いた。
「おはようございますお嬢様。」
「入りなさい。」
ノックしながら声を掛けると、中からお嬢様の返事が返ってきた。
「失礼します」と言いながら部屋の中へ入ると、
「今日は早くこれたのね。褒めてあげるわ繋。」
お嬢様がベッドに座っていた・・・まだ寝巻のままで。
「えっと、お嬢様?今日は学校じゃ・・・。」
「そうよ。だから早く着替えさせなさい。」
「えっ!?お、俺が・・・ですか?」
立ち上がって両手を広げたお嬢様がそんな事を言ってきたものだから、まさか自分がするのかと聞き返してしまった。
「あっ・・・」と気づいた時には遅く、案の定お嬢様の顔色が変わり、そのまま俺の方へと近づいて来た。
「す、すみませんお嬢様・・・うぐっ!?」
急いで謝ったが、ネクタイを引っ張られて膝をつかせられる。
「何?まさか私に寝巻のまま学校に行けって言うの、繋。」
「いえっ、ち、違います・・・。」
顔を近づけて怒りの声を当ててくるお嬢様に再度謝ると、「フンっ!」と言ってネクタイを放してくれた。
ネクタイを整え直す。
「さぁ、わかったのなら早く着替えさせなさい。服は昨日メイドが用意した制服が置いてあるわ。次からはそれも繋がするのよ。わかった?」
「はい、お嬢様。」
ベッドの方へ移動して、お嬢様の前に跪く。
これは仕事だと自分に言い聞かせながら、お嬢様の衣服を脱がせていく。
可愛らしい下着を極力目にしない様に、脱がせた衣服を素早く畳んだら、用意されてあった制服を手に取り、これもまた素早くお嬢様に着せていく。
俺の膝にお嬢様の足を乗せ、靴下も履かせる。
何とか着替えさせ終わった・・・。
「まぁまぁね。次からはもっと早く着せるのよ。繋。」
「分かりました、お嬢様。」
お嬢様からの評価に一息ついた矢先・・・、
「それと繋・・・。」
「は、はい!何ですかお嬢様!」
「・・・今日の私の穿いている下着、どうだった?」
爆弾発言を食らわせてきた。
「はっ!?えぇっ!?・・・な、何故そんな事を・・・」
何を言われても冷静に返そうと思っても、そんな質問普通あり得ない・・・。
聞き返せばまた、お嬢様の怒りに触れるかもしれなかったが、理由が知りたい。
・・・まぁそんな事言ったところで、お嬢様が教えてくれるわけも無いが・・・。
ガッ、と顔を両側から掴まれる。
「私の質問に答えなさい。ど・う・だっ・た・?」
「・・・す、すごく、可愛らしいと、思いました・・・。」
「当然よね。」
俺の返答を聞くと、顔を離して上機嫌でそう言った。
今の質問に何の意味があるのか分からない。
ただ一つ分かった事は・・・そう言う質問が飛んでくる事もあるって事・・・。
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