正座させられて・・・
お嬢様の言うルールとはたった一つだった。
「私の言う事は絶対。」
らしい・・・。
これじゃあ執事と言うより奴隷に近い感じがしたが、これも任された仕事だ、仕方がない・・・。
与えられた部屋の一室で、先ほどの事を思い出す。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
未だに俺の膝の上に座っているお嬢様からルールを言い渡された直後、お嬢様は懐からスマホを取り出して、誰かに連絡を入れた。
数分もせずに、部屋にメイドさん達がやって来た。
そしてやって来たメイドさん達にお嬢様が告げる。
「今日から私のになった繋よ。開いている部屋へ案内して・・・それと繋。」
「は、はい。」
「貴方、今は何処に住んでいるの?」
「えっと・・・、普通のアパートですけど・・・。」
「そう、ならその家も解約させるわ。今日からここに住みなさい。」
とんでもない事を言い出すお嬢様。
勿論、聞き返した。
「ま、待ってくださいお嬢様!急にそんな事言われても・・・」
「言ったでしょ、私の言う事は絶対だって。後で私の部屋に来なさい。」
それだけ言い残して。お嬢様は部屋から出て行った・・・。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「まさかこんな事になるなんて・・・はぁ。」
一人で寝るには大きすぎるベッドに腰掛けて溜息を漏らす。
あれは我満なんてレベルじゃない。
もしかして、あんなにメイドさんがいるのにお嬢様のお世話係が一人もいないのは・・・だからあんな張り紙してたのか・・・。
なんとなく分かった気がする。
つまり俺は、皆の代わりになったのか・・・。
「まぁでも、親に会えない寂しさは分かるけどさぁ・・・。」
何も住んでる部屋を解約までしなくてもいいでしょ、と続けて口にした時、ドアがノックされた。
どうぞと声を掛けると、俺を拉致したメイドさん達が入ってきた。
そして入ってくるなり二人して謝ってきた。
「すみません無逃さん。お嬢様のお世話をして頂く事になって・・・。」
「本当は今いるメイド達で交代でやっていたんですけど・・・そのぉ・・・お嬢様の我儘が・・・。」
物凄く言いづらそうに語るメイドさん。
言わなくても理解している、さっきあんな事をされた後なんだから・・・。
「いいですよ別に。それに3か月の短期間ですから。」
「えっ?ずっと居てくれるんじゃないんですか?」
「すみません。流石にずっとは・・・。」
「・・・でも家、解約されちゃいましたよ?」
「・・・・・・。」
そうだった・・・。
畳みかけるようにメイドさんが二人係で俺に詰め寄ってくる。
「どうですか。これを機にずっと居るなんて?」
「ちゃんと他に住める場所を探します。」
「ちぇ~・・・。」
キッパリと断ったら、変な声と共に残念な顔をされた。
俺の中にメイドさんのイメージが崩れていく・・・。
「そう言えば、アパートにあった俺の私物は・・・」
「それならちゃんと持ってくるように伝えてありますからご心配なさらずに。」
「そうですか。」
「ところで・・・」
安堵していた俺に、メイドさんが続けて言ってくる。
「?何ですか?」
「お嬢様の部屋に行かなくていいんですか?・・・また何言われるか分かりませんよ・・・。」
「あっ・・・。」
それを聞いた俺は、慌てて部屋を飛び出した・・・が、すぐに立ち止まってメイドさんに尋ねる。
「お嬢様の部屋って何処ですか?」
俺は今日、この家に来たばかりだ・・・そうでなくても、この広い家の隅々まで覚えるのには時間が掛かる・・・。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ぬいぐるみが置いてある、全面ピンクと白で覆われた部屋。
如何にも女の子が好みそうな部屋で、俺は正座していた。
・・・いや、正しくはさせられている。
目の前のベッドに座っているお嬢様に・・・。
「繋。私が部屋に来てと言ってから、一体どれだけ待たせれば気が済むの?」
「すみませんお嬢様。・・・でもあの。俺は今日此処に来たばかりで・・・」
「言い訳は聞きたく無いわ。次は無いわよ?」
そう言って、足で俺の胸元をグッと押してくるお嬢様。
細くて白い、きめ細やかな足が、俺の目の前にある。
それを直視するのがなんだかいけない気がして、目を反らすが、反らしたその先・・・フリルの付いたスカートを穿いているお嬢様が足を上げているので、スカートの中が見えそうになっている。
きっと少女愛好者とかならこの状況を嬉しく思うんだろうが、生憎俺は違う。
しかし、そうであっても無くても・・・下手をすれば逮捕されかねない・・・。
それも、大企業の社長の娘さんだ・・・。
俺はつい、顔ごと視線を反らしてしまった。
・・・勿論、それをお嬢様が気にしないはずは無く。
「ちょっと繋、今私から目を反らしたわね?」
「!?い、いえ、それは・・・」
「言い訳は聞きたくないと言ったでしょ!こっちに来なさい!」
言われた通りにお嬢様に近づいていく。
もうこれ以上近づけない距離に来た時・・・、
「うむっ!?」
お嬢様が太腿で俺の顔を挟み込んできた。
柔らかい太腿が、俺の顔をギリギリと挟み込む。
予想だにしない行動に、俺は慌ててお嬢様から離れようとした。
抜け出そうと思えばできた、言ってしまえば相手はまだ子供だ。
力の差がある。
でも、
「暴れないで!!」
「っ!?」
頭の上から飛んでくるお嬢様の怒号に、動きを止める。
その間も、挟まれた力が緩まることは無い。
「何度言えば分かるの?私の言う事は絶対なのよ。私がやる事にも口出しはしない。分かった?」
更に力を加えるお嬢様。
俺はそれでも答えた。
「うぐっ、すみません。わ、分かりました、お嬢様・・・。」
「んっ、・・・分かればいいわ。」
何か聞こえた気がしたが、離してもらう事に精一杯だった。
解放された俺は、小さく咳き込むと、お嬢様の方を見る。
それで気を良くしたのか、お嬢様は微笑むと、立ち上がって机の上にあった何かを持って、俺の方へ歩み寄って来た。
「これを着けなさい。」
「これって・・・。」
お嬢様が見せてきたのはチョーカーだった。
黒いチョーカーで、よく見ると、金色の文字で「神之超光璃」と刺繍が入っている。
「こんな時の為に作らせたのよ。」
これを俺が着けるのかと一瞬思ったが、それを振り払う。
また何されるか分かったもんじゃないから・・・。
お嬢様の手にあるそれを受取ろうとしたら、それを持ったままお嬢様が俺の後ろに回り込んだ。
「いいわ。私が着けてあげる。感謝しなさい。」
「ありがとう、ごさいます。お嬢様。」
後ろからか細い手が回されて、俺の首にチョーカーが着けられる。
思ったより苦しくはない。
そう思っていたら、お嬢様が後ろから抱き着いてきた。
また取り乱しそうになったが、落ち着いてじっとする。
腕を俺の首に回して、肩に顎を乗せるお嬢様。
「これで、繋は私のよ。」
「・・・はい。」
こうして俺は正真正銘、我儘なお嬢様の執事となった。
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