第17話 仲間
「このクエストを受けるわ!」
「ゴブリン退治のクエストですね」
師匠はドヤ顔でミーアさんに依頼書を渡す。
ドヤ顔うぜー。
「普通だったら初クエストは採取ですが、討伐クエストですか。確かにギル様はゴブリン退治得意ですもんね」
「...はははっ」
ミーアさんに毒を吐かれた。
俺は愛想笑いで誤魔化す。
「はい。依頼を受理しました。ゴブリン5体の討伐お願いします。達成証拠はゴブリンの耳10個でお願いします」
あれ?ゴブリンの耳ってどうやって取ればいいんだ?
そうか、迷宮の外だから死体は消えないんだ。
「それと、高ランクのクエストを受ける場合、パーティーを組んで臨むことが多くなりますので、今の内から慣れておいたらどうでしょうか?」
「ギルは楽勝よ!パーティーなんて組む必要はないわ!」
なんで師匠が決めるんだよ。
俺はなるべく穏便に師匠を説得しようとしたら、
「ギル様、Eランク用のパーティー募集テーブルはあちらにあります」
と言って冒険者達が騒いでいるテーブルの奥を指差す。
ここからはよく見えないが誰かいるのだろうか。
「は?Eランクがわざわざパーティー組むわけないでしょ。ただでさえEランクは少ないのに...まさか、」
師匠はミーアさんを睨む。
「アンタもしかして地雷を押し付けようとしてるんじゃ無いわよね。アンタのお人好しに付き合わされる程暇じゃないわよ。行きましょうギル」
さっきから何を言っているのかよく分からない。
俺が困っているとミーアさんはニッコリと笑って師匠に言い放つ。
「サヤ様、まさか高ランク冒険者である貴方が、ギルドの規則を知らないなんてこと、あるはずないですよね?」
「えっ?ギルドの規則。あー、あったわね。ちっ」
「どういうことですか?師匠」
「パーティーを組むときは普通、同ランクの人としか
組めないのよ」
「師匠のランクは?」
「ギルよりかは高いわよ」
師匠のランク教えてくれなかった。
俺が落ち込んでいる間にも会話は進む。
「しょうがないわね。分かったわ。でも、対価は頂くわよ」
「ありがとうございます。お礼については後日...」
話が終わると、師匠は俺に奥のテーブルに行くようにと顎で指し示す。
俺がテーブルに向かおうとすると、
「あぁ。言い忘れてました。ギル様、王都の外に出る前に防具をちゃんと装備してくださいね。今のギル様は、とてもじゃないですが冒険者には見えません」
自分の格好を見てみる。
安物の服に安物のズボン。
腰にかけた高価な剣。
確かに剣以外は冒険者要素ないな。
「ほら、これで買ってきなさい」
師匠は金が入った袋をこっちに投げてきた。
ずっしりと思い。借金増えちゃったなぁ。
俺は気を取り直して奥のテーブルに向かった。
***
「うわぁ」
そこには負のオーラが漂っていた。
1人の少女が真ん中のテーブルに座って突っ伏していた。
周りのテーブルを見ると、他にEランクのパーティーを募集している人がいないのかそこだけ、静かだった。
物凄い声かけづらいなぁ。
突如背中を押される。
「う、うわ」
少女が突っ伏しているテーブルにぶつかってしまう。
首がゆっくりと上がって俺の方を向く。
俺はなるべく頑張って笑顔を作って話しかける。
「お、俺今パーティー作ろうとしたんですけど誰も入ってこないんで、一緒に組みませんか?」
即興にしては上手く言えたと思う。
相手の立場を最大限に尊重して誘う。
しかし効果が無かったのか、少女の顔は歪んで、
泣き出した。
「えっ?俺なんかした?」
「ヨーランド家の娘じゃない。もしかして能無しルーザー?」
その一言を聞くと少女はさらに泣いてしまう。
「師匠!何してるんですか!」
「ごめんごめん。だけどこれは、ねえ」
「どういうことですか?」
「この子、多分ヨーランド家の五女以下ね」
「五女?」
「一から説明するわね。この国には様々な貴族がいるわ。その中でもヤバいのがこのヨーランド家ってところで、この家は代々女性が当主を務めるのよ。それでね...」
「やめてください!私が説明します」
泣いていた少女が突然大声をだして話を止める。
手で目をこすって話し始める。
「私はルネア。ヨーランド家七女、ルネア・ヨーランドです」
そう言ってお辞儀する。
七女って子供多くね?
「今は訳あって冒険者をやらさせて頂いてます」
「はぁ。そうなんですか。どうしてさっきテーブルに突っ伏してたんですか?」
「デリカシーないわねー」
師匠、アンタには言われたくない。
「私、冒険者になったのはいいんですけど、魔物が倒せなくて、今までずっと採取依頼だけやってきたんですけど、そろそろDランクに上がらないとギルドから追放するって言われて...」
「あー。確かランク上げるには特定の回数のクエストクリアしなきゃいけなくてさらに、討伐、採取依頼を1回は必ずクリアしなきゃいけなかったわね」
そうだったんだ。
「俺、ちょうどゴブリン討伐のクエスト行こうと思ってたんですけど、一緒に行きませんか?」
「ほ、ほんとですか?やったぁ。ありがとうございます」
ルネアはニッコリと笑って俺にお礼を言う。
「よし、じゃあクエストに出発!」
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