第15話 憑依

「...月花」


 ギルが剣を振るう。


「まだまだ甘いな。白竜!」


 ガリードも剣を振るう。

2つの剣は交差し火花を散らす。

そして、ガリードが競り勝つ。

ギルは体勢を大きく崩してしまう。

 その隙を見逃さず、剣を構える。


「これは受けられねえかな?九頭龍!」


 ガリードはギルに向かって剣を突き出す。

ギルはそれを迎え撃とうとする。

しかし9つの衝撃がギルを襲って防御に回らざるを得ない状況になる。


「...分身斬り」


 同時攻撃技、分身斬りを使う。

分身斬りとは、一見、ただの袈裟斬りに見えるが、実は瞬時に5回攻撃する、連撃技だ。

分身斬りによって9つの内の5つが相殺される。


「...絶空」


そして分身斬りから絶空へと繋げる。

瞬時に残りの4つを全てを打ち消す。

絶空も同時攻撃技で一瞬で4回もの斬撃を発生させる武技である。

 分身斬りと絶空は東方流の同時連撃攻撃技というジャンルである。

この同時連撃攻撃技は上から下までのどの段に所属していない例外技である。

習得難易度の高さから、真段と呼ばれる事もある。


「真段の技を使うとは、なかなかやるな!しかしまだ剣聖には届かねえな!」


技を潰されたと知るや否や、すぐ次の攻撃に移る。


「飛翔乱波覇道斬!」


 ガリードは東方流中段上級武技、飛翔乱波覇道斬を発動する。

まず天高く飛び上がり、そして空中で剣を構えた後、

下に向かって剣を何度も振る。

剣を振るたびに衝撃波が発生し、下にいるギルを襲う。

ギルは走ってその衝撃波を躱す。

暫くすると武技の効果が切れたのかガリードが地上に戻る。

その隙を見逃さず、すかさずギルが斬りかかる。


「....瞬閃」


中段上級武技、瞬閃を使う。

閃光の如く剣を叩き込むが、ガリードはそれを軽くいなす。


「...鮮血」


続いて中段上級武技、鮮血を使い、さらに、


「月花」


月花へと繋げる。


「武技の連続使用はすげーな。けど肝心のスキルが弱い。烈風!」


 ガリードは剣を横に振る。

すると剣先から竜巻が発生して、ギルの技を全て打ち消す。

しかしギルは止まらず技を使う。


「...赤月花」


剣が赤く光りそして炎を纏う。

その剣をガリードに何度も叩きつけようとする。


「複合武技か。お前、本当にすげーよ。でもな、相手が悪かったな。空虚!」


 ガリードの剣が白く光る。

そして、風が吹く。

 その瞬間、訓練場は白に染まり、何も聞こえなくなる。

光が収まった頃には、訓練場には2人しか立っていなかった。


「ルーク。終わったぜ。中々の強さだった」


「やっと終わったんだね。他の冒険者は避難させといたけどギルの様子的に避難させる必要はなかったかな?」


「まあ、いいじゃねえか。でも、多分払えてねぇ。」


「仕方ないさ。あれは魂にくっ付いている。どうにもできないさ」


「おい、錬金術師、早く出てこい」


ガリードが訓練場の入り口に向かって叫ぶ。

すると、


「ごめーん。ちょっと道に迷っちゃって」


サヤが飛び出して来る。


「何が道に迷っただ、厄介事を押し付けやがって。ほら、お前の弟子だ、持っていけ」


ガリードはギルをサヤに投げ渡す。


「ありがとね。じゃあ、明日からは普通に頼むわ」


おう、と短い返事を聞いて、ギルドの入り口に歩き出す。



***


 目が覚めるとベッドに寝ていた。

またこのパターンか。

しかし今度は治療院ではなかった。


「道具屋か」


俺の第二の実家、道具屋だった。

 起き上がって、表へ出る。

すると師匠がこっちにやって来た。


「大丈夫みたいね」


「はい。また、俺、やっちゃいました?」


「やっちゃったわね」


やってしまったようだ。


「そんな事はどうでもいいわ、それよりも、ギル、今日でここを出るわよ!荷物を纏めなさい!」


 俺は開いた口が塞がらなかった。

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