第14話 剣聖
剣聖とは職業の一種である。
しかし普通の職業とは違い、普通は世界で1人しか就くことができないとてもレアな職業だ。
とてもレアな分、強さも段違いでまさに一騎当千の実力を持っていると言えるだろう。
実際魔王討伐パーティーには必須の職業と言われているぐらいには強い。
そんな剣聖は今代は2人いる。
その2人が今、俺の目の前にいた。
「俺はガリード・ライトリヒだ。俺の稽古はルークみたいに甘くはないから精々頑張れよ」
ガリードとルーク。それは代々剣聖を務めている血筋に生まれた双子だ。
どちらも先代の剣聖に勝るとも劣らない力を持っており、魔王討伐前であるが既に勇者という称号を手に入れている。
「し、師匠?な、なんで、こ、ここに剣聖がいるんですかっ!」
ほっぺたをつねってみる。痛い。
夢じゃないのか。
周りを見ると、もう2人がいる事が広まったのか沢山の人がいる。
この中で稽古をするのか。気が滅入りそうだ。
「まあ、気にする必要はないよギル。きっと兄が追い払ってくれるはず」
「はあ、任せな」
ガリードさんは見物客の前につかつかと歩いていき、
「すまないがどっか行ってくれないか?」
と言う。
すると見物客はすっと離れていった。
「すごい聞き分け良いですね」
「前、色々あってね」
ああ、性格的にあれかな。
「さあ、いらない奴もどっかに行ったし訓練するぞ。先ずは実力を知りたいから模擬戦をやる。実剣でいいからかかってこい」
「え?本物の剣でいいんですか?」
「仮にも僕たちは剣聖だからね、負けるつもりはないし勿論手加減もするさ」
そう言って木刀を見せた。
「ガリード、先にやってくれないかい?」
「わかった」
短く返事をし、訓練場の真ん中へと歩き出す。
俺も剣を持ってついていく。
「準備はいいか?」
10メートルくらい距離を離して向き合う。
俺は貰った剣を鞘から抜き、構える。
「合図はルークにしてもらう、ルーク頼んだ」
はいはい、とルークは言って俺とガリードさんの間に立つ。
「よーい、初め!」
合図をした瞬間、地を蹴りガリードに近づく。
剣を体の左側に持っていき、居合切りの準備をする。
ガリードは特に構えずにジッとこちらを見つめている。
近づいた俺はそのまま居合切りで肉薄する。
だが、
「人を斬ることに怯えるな!もっと力を入れろ」
突如、視界が反転する。
急いで起き上がる。
ガリードは最初と何も変わらず俺を見つめていた。
俺はまた斬りかかる。
しかしそれを剣で受け止められる。
腕がいてぇ。
力が強いのか、まるで壁を殴ったかのような反動が俺を襲う。
しかし俺は臆せずもう一度斬りかかる。
今度は連撃を意識して斬る。
しかし何度も剣でいなされる。
俺は攻撃を一旦やめて距離をとる。
そして考える。
どうやったら一太刀浴びせることができるか。
しかし、
「今度はこっちから行くぞ!」
急に木刀で斬りかかってくる。
何とか剣を前に出して受け止める。
くっ!力が強すぎだろ。
受け流すしかない。
俺は右側に力を受け流し、そのままの勢いで相手の懐に潜り込む。
そしてそのまま剣を振り抜こうとするが、
「まだまだ甘い」
脇腹に強い衝撃。
俺は地面を何度も転がる。
止まった頃にはもう俺は立ち上がれなかった。
「だいたいの実力は分かった。じゃあ、次だな」
ガリードさんはそう言いながらこちらに近づき、今度は木刀ではなく、実剣を手に持つ。
「さあ、死ね」
そう言って剣を振り下ろす。
は?なんで?訓練じゃないのか。
死にたくない、嫌だ。
抵抗しようとする。
しかし俺の体は動かない。
剣が俺の前に迫る。
目の前が真っ暗になる。
俺は死の恐怖で気絶してしまった。
しかし剣は容赦なく俺の体へ迫る。
だが、意識のない俺の体は勝手に動き、ガリードの攻撃を受け止めた。
***
「ようやく現れやがったか。邪気がすげーな。これはヤバそうだ」
そう言いながらガリードは再び斬りかかる。
しかしギルはそれを躱し、
「...分身斬り」
と言って思い切り剣を振り上げた。
後半戦が始まる。
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