第11話 説明

 目が覚めるとベッドに俺は寝ていた。

体を起こそうと手をベッドに着くと腕に痛みが走る。

そういえば俺、トロールと戦って、それで、それで、あれ?ボコボコにされたんだっけ。

 包帯が巻かれている腕を見て、なんとか思い出そうとする。

しかし思考は闖入者によって一旦打ち消された。


「やっと目が覚めたのね」


「師匠!」


 入ってきたのは師匠だった。

師匠は俺を見て大きなため息をして、近くの椅子に座る。


「師匠、ここ、どこですか?てか俺、どうなったんですか?」


「ここは治療院よ。あなたは私に倒された後約3日間眠り続けていたのよ。というかギル、覚えてないの?」


「えっ?師匠に倒されたんですか?確か俺、トロールにやられて気絶したはずじゃあ」


「あー、そうね。今から説明するからちょっと待ってね。ミーア!どうぞー」


と言った後、ドアが開いて女の人が入ってきた。

 あれは、確かギルドの受付嬢さんじゃなかったっけ。

なんでここに。


「すみません。失礼します。」


礼儀正しく入室し、師匠の隣の椅子に腰をかける。


「とりあえず今から黄昏の迷宮で起こったことを説明するわね。本当だったらギルにも話してもらうつもりだったけど忘れてるみたいだし」


 説明が始まった。

師匠の話すことは全て全く身に覚えがないもので、信じられない話だった。

 しかし俺は一つだけ心当たりがある。

一度だけ、似たような状況になった事がある。

俺がまだ故郷の村にいた頃魔物に襲われた事が一回ある。

 確かそのとき友達を庇って魔物に噛まれたんだ。

あまりの痛さに気絶してしまったが、次に目を覚ましたとき、辺りは血だらけで魔物の死体らしきものが散らばっていた。

 幸い、友達も気絶していて、誰にも見られてなかったので親には嘘をついて秘密にしていた、はず。


「そのとき一番不思議だったのはギルのスキル欄がおかしかったことね!」


「おかしいとは、具体的に」


「ギルのスキルは呪術と火魔法しかなかったのに何故かその2つが消えて剣術スキルがあったのよ」


「それは、不思議ですね。聞いたことがない」


「これで全部ね。ギルド長に伝えといて頂戴」


「はい、分かりました。これにて失礼します」


受付嬢さんは出て行った。

 師匠はこちらに顔を向ける。


「さあ、邪魔者が居なくなったし、個人的な話をしましょう」


どこか含みのある笑みを浮かべながら近づいてくる。

嫌な予感がする。

 師匠は俺が寝ているベッドに腰掛けて、腕を掴んでくる。

痛い、痛い、痛いって!


「師匠、やめて下さい!」


「どれだけ心配かけたと思ってるのよ!しかもアンタ私の顔に傷をつけたのよ!師匠を傷つけるなんて言語道断よ!」


そのあと約10分くらい愚痴を零していたが、満足したのかスッキリとした顔でこれからの事を伝えてくる。


「とりあえず完治するまで1週間くらいかかりそうだからそれまでここに泊まらせてもらいなさい。金は私が払っておくわ」


師匠には本当に頭が上がらない。

 俺はありがとうございます、と礼をする。


「完治した後はすぐギルドに行って登録するわよ!そしてBランクまで急いで上げるわ!」


「俺、もう条件満たしてるんですか?」


あー、まあ師匠が言うには俺がトロールを倒したみたいだし、レベルは上がるのかー。

師匠は紙に俺のステータスを書いてくれる。

確かに条件は満たしている。


「ありがとうございます!師匠のおかげで俺、冒険者になれるんですね!」


師匠は照れ臭そうに笑って黙ってしまう。

 暫くは穏やかな時間を過ごせそうだな。

問題はまだまだあるが今は、全て忘れてゆっくりしよう。

 俺はそのまま眠りについた。

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