現在の三男

 三男は小学校を卒業した後、不登校の生徒が集まる私立中学で寮生活をしながら3年間を過ごした。そこで勉強に励み、市内で4番目の公立高校に入学した。

 この高校に合格した時、まず私が思ったのは"とりあえず送る必要があるかどうかで悩まなくていいな"ということだった。

 なにせ自宅から歩いて8分の場所にある高校なのだから。


 三男は歩いて高校へ通っている。部活はバスケットボール部。バスケットのちゃんとした経験はないが、中学の時に経験者の先輩に教えられ楽しかったそうだ。身長が高いので有利だとも思ったのかもしれない。

 担任の男性教諭には入学式のあとに私から挨拶程度に話しをした。地元ではない特殊な中学からの入学で、中学からも情報は伝わっているのだろう。担任は心得ているようだった。

 

 入学にあたり、私は自分に言い聞かせた。

"卒業できたら万々歳。"

"途中退学になってもなんとかなる。"

 不登校の生徒が集まった少しゆるめの中学とは違う普通の高校での生活。三男は教室という限られたスペースで40人の生徒と一緒に6時限もしくは7時限の授業をうけている。

"限られたスペース"で"多人数"で""行動を制限される"という状況が苦手なのだと思うのだが…

火曜日から金曜日の放課後は部活。ヘトヘトになって帰ってくる。

 友達はできた。仲の良い6人くらいのグループができているようだ。


 思いのほか順調にみえる三男の高校生活だが、実は完全に安心できているわけではない。5月くらいから1日だけ単発で休んでしまう事が3回ほどあった。しかし、それは決まって金曜日で、週末が終わると再び登校していた。それが冬休みが明けて2週間ほど経ったころ、週末をはさんでではあるが、続けざまに4日間の欠席をした。

私は焦りそうになる気持ちを落ち着かせ、

"想定内!"

と、自分に言い聞かせた。

自分自身の不安や心配は無視!とにかくいつもの落ち着いた生活を心がけ…火曜日に登校した三男は部活には出ずに帰ってきて言った。「なんだか咳が出るし。熱い」

インフルエンザだった。

 4連日の不登校の後の1日だけの登校の後のインフルエンザによる出席停止3日間。そして週末に突入。

 インフルエンザの理由がなくなった週末明け、やはり登校できない三男がいた。

私はいつものように学校に欠席の連絡をし、変わらない1日をすごしたが、少し考えた。

"小学校の頃よりは成長してるのだから、頑張れば登校できるのでは?"

 という事で翌日は、ベッドの中で登校する気のなさそうな三男に声をかけた。

「さあ、今日は行こう。」

そして、手をひいてベッドから起こしてみた。思ったよりは抵抗はなく、その日三男は登校した。そこからは休んでいない。


 とりあえず数日、きちんと登校し、部活にも参加して帰ってくる。友達や先輩の話しなどもしてくれる。

 こうして毎日元気に登校してくれると安心なのだが…学校は親の安心のために行く場所ではない。まだまだ先はわからない。

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